工業簿記・原価計算の解法


学校法人 愛甲学院
甲山国際文科学館

AICOH School of Business and Law
Kabto-Yama College of International Liberal Arts


はじめに

 このノートは、「日本商工会議所主催・簿記2級講習会」および「労働省ビジネスキャリア制度認定教育訓練・原価計算」のために用意したものをベースに編集しました。
 これらの講習会の受講される方方は、年齢層としては20〜50歳で、職域は営業マン・一般事務員・公務員・主婦など多岐にわたっています。また、講習時間は一回2時間半〜3時間の講義で、おおむね30回という規模で行われています。
 あらためてこのたび、このノートを作成しましたのは、私たちがかなり以前から展開している「ある種」ユニークな講義展開を一度整理し、その集大成をはかりたいという強い気持からです。
 そして、このノートは、徹底的に「原価計算・工業簿記の解法」にこだわったテクニカルな内容となっています。
 決して小手先の技術という意味ではなく、公式等を丸暗記するといった愚を排した、原価計算の考え方を明らかにしながら、確実に「解ける」ことを主眼とし、手順を筋道だてて説明しています。
 ここで、このノートのポイントをひとつふたつ指摘しておきたいと思います。
 ひとつは、原価計算の考え方を重層的に説明したこと、二つ目として、様様な原価計算の態様を、勘定連絡図を通して、理解するよう配慮したこと、また、総合原価計算の解法として「データ方式」を明示したことが挙げられるかと思います。
 このノートは私たちの経験に基づいて作成されましたので、少なからず誤りや不正確な点があるかと思います。ご好意あるご叱正・ご指摘を賜りたいと思います。

Written by Nishimura Kimio

目  次


本論

以上


第1編 序論


第1章 簿記の種類

 私たちは、様様な目的や要請により企業活動を記録する必要があります。例えば、債権・債務の管理目的であり、利害関係者への報告目的などです。そして、その記録は帳簿に記入して管理されることとなります。
 この帳簿記入技術としての「簿記」は、一般的にイ、単式簿記(Single Entry Book-keeping)とロ、複式簿記(Double Entry Book-keeping)とに分類されています。

第1節 単式簿記

 きわめて自然発生的な簿記の方法で、人人がいわば常識的に金銭の収支や財産の移動を記録した場合が、単式簿記ということになります。例えば、家計簿や大福帳などがこれにあたっています。古今東西を問わずありとあらゆる帳簿記入としての簿記は、複式簿記を除いて、すべて単式簿記でした。
 単式簿記は経済活動の結果のみを記録し、その結果、その財政状態を明らかにすることが可能です。

第2節 複式簿記

 十字軍以降の12〜13世紀頃のイタリアにおける「冒険企業」などの商人たちが、彼らの経済活動の記録にあたり、工夫に工夫を凝らして創り上げた特殊な記帳技術をベースとして完成した簿記を、「複式簿記」といいます。複式簿記は、極めて体系的・組織的な学問であって、企業の経済活動を原因と結果の二側面から記録を行い、その結果、その企業の「経営成績」と「財政状態」の二つの情報を利害関係者に提供することができます。
 しかし、この二側面からの記入、つまり「貸借記入」という複式簿記の原理は、記録をするにあたっての姿勢や考え方であって、そのまま生の形で説くことができません。したがって、私たちは複式簿記の原理を学習・理解するためには、帳簿記入の対象としての企業活動の「場」の設定が必要となります。
 すなわち、a,商業活動に適用すれば「商業簿記」、b,工業活動に適用すれば「工業簿記」と呼ばれ、さらにc,サービス業に適用した場合の例として「銀行簿記」が挙げられます。つまり業種業態ごとに「××簿記」が成立するのですが、基本はこうした「××簿記」を通して、複式簿記の原理を理解することが重要であり、複式簿記の原理を理解・体得すれば、各種の簿記は容易に修得することができるといえます。

第1項 商業簿記

 商業活動は、Karl Marxによって定式化された「G−W−G'」として表すことができます。G(Geld 貨幣)−W(Ware 商品)という仕入、W−G'(=G+g より大きな貨幣)という販売を中心とした商業活動を記録するという記帳上のポイントをマスターするのが「商業簿記」です。

第2項 工業簿記

 工業活動は、G−W=Pm&A…【P】…W'−G'と定式化されています。
 すなわち、まず最初に保有しているG(Geld 貨幣)をW(Ware 商品)に替えるのですが、この商品の一つはPm(Produktions Material 生産手段)で、いま一つは、A(Arbeit Kraft 労働力)と呼ばれる商品です。次にこれらを【P】(Produktion 生産過程)に投入します。結果、新たなるW'(Ware 製品)が産出されることとなります。
 たとえば、「材木とノコギリ」という生産手段と「工員」を雇い、これらを製造工程に投入して、結果、「机」という製品が製造されるのです。この完成した製品を、最終的にはG'(=G+g より大きな貨幣)と交換することによって、ひとつの工業活動は完了し、さらに新たな交換過程へと連続的に展開していきます。このようなプロセスを記録するのが「工業簿記」です。
 ここで最初のW−Gおよび最終のW'−G'の部分は、商業活動における仕入販売活動に酷似しており、一般に「外部取引」と呼ばれています。したがって商業簿記におけるところの会計処理(売上原価対立法)と変わるところがありません。
 最初に購入された商品である生産手段と労働力が製品に姿形を変える過程である【P】と表される部分は「内部取引」と呼ばれ、この記録方法こそが工業簿記を特徴づけているといえます。「工業簿記」は、さらにこの生産過程における財貨と用役の消費と価値移転を計算する「原価計算」を必要としています。

第3項 サービス業簿記

 サービス業に適用される複式簿記の代表例として、「銀行簿記」などが挙げられます。サービス業は、G−G'と定式化されています。通常、複式簿記の学習にあっては、「商業簿記」と「工業簿記」を取り上げ、その活動がきわめてシンプルであるサービス業の記帳方法は推して知るべしということで割愛されているようです。


第2章 原価計算の目的

第1節 原価計算の意義

 原価計算とは、基本的には、工業簿記に固有の生産過程における財の変化を計算するものです。原価計算は、産業革命の一産物であるといわれ、近代的な工場制度において、製品を製造するために実際に消費された原価を測定し、計算する技法として、1870年ごろのイギリスで誕生しました。
 ただし、当初の原価計算は複式簿記による会計機構とは結び付かずに、消費原価の測定のため工場のエンジニアによって行われていました。これが本社の一般会計と結合されて「制度としての原価計算」となっていったのが、工業簿記における「原価会計」です。したがって、「工業簿記=財務会計+原価会計」と書き表すことができます。

第2節 原価計算基準

 昭和37年11月に大蔵省企業会計審議会が、原価計算の慣行のうちから一般に公正妥当と認められるところを要約して設定したものが、「原価計算基準」です。この原価計算基準は、「企業会計原則」の一環を成し、原価計算に関する実践規範として機能しています。

第3節 原価計算の目的

 原価計算の目的は、「原価計算基準」によれば、次の五つが挙げられます。

  1. 公表財務諸表作成目的
  2. 価格計算目的
  3. 原価管理目的
  4. 予算編成・統制目的
  5. 経営意思決定目的

第1項 公表財務諸表作成目的

 企業外部の利害関係者に対して報告する公表財務諸表の作成にあたり、原価計算は重要な情報を提供することとなります。具体的には、損益計算書における製品売上原価、および貸借対照表における製品・仕掛品などの棚卸資産の計算は、原価計算に依っています。
 したがって、原価計算の不可欠の目的として公表財務諸表作成目的が挙げられます。

第2項 価格計算目的

 製品の販売価格を決定するために必要な原価資料の提供こそが、価格計算の目的です。原価計算の原初的な目的であるこの製品価格の計算は、現在においても、企業の基本的な計画や予算編成過程に重要な情報を提供することとなります。
 実際原価計算はもちろんのこと、特殊原価調査または直接原価計算によるCVP分析などが役立つ資料を提供しています。

第3項 原価管理目的

 企業努力としての生産の合理化・コスト節減は、経営管理者に対して原価管理に必要な原価資料を提供することから始められます。原価管理は、原価の標準を設定・指示し、原価の実際発生額との比較による差異の原因を分析し、原価資料を経営管理者に提供することによって、結果、生産能率の増進が図られます。
 原価管理目的には標準原価計算制度が採られます。

第4項 予算編成・統制目的

 大綱的な利益計画に基づき、業務執行に関する総合的な期間計画である予算を編成すること、ならびに予算と実績とを比較衡量して、原価部門の業績評価や部門の活動の管理をする予算統制に必要な原価資料を提供します。
 直接原価計算制度が、予算目的に有用な情報を提供することができます。

第5項 経営意思決定目的

 経営の基本計画を設定する経営意思決定に必要な各種の原価資料を提供することも原価計算の目的であって、管理会計と結合した特殊原価調査がその任に適しています。


第3章 原価計算の種類

 原価計算は、一般的に、次のように分類されます。
 財務会計との関係を基準として、「制度としての原価計算」と「特殊原価調査」とに分類されます。
 「制度としての原価計算」は、原価の対象範囲を基準として、「全部原価計算」と「部分原価計算」に分類されます。部分原価計算のうちもっとも代表的な原価計算は、直接原価計算です。
 「全部原価計算」は、原価の計算基準により、「実際原価計算」と「標準原価計算」とに分けることができます。
 「実際原価計算」は、原価の製品別計算方法により、「個別原価計算」と「総合原価計算」に分類されます。
 さらに「総合原価計算」は、製品の種類により、(1)単純総合原価計算、(2)等級別総合原価計算、(3)組別総合原価計算に分けられ、その他、「連産品計算」に細分されます。
 また「総合原価計算」は、生産工程の数により、それぞれが、「単一工程総合原価計算」と「工程別総合原価計算」とに分けられます。
 なお、「個別原価計算」は、部門別計算をしないかするかにより、「単純個別原価計算」と「部門別個別原価計算」とに分けられます。
 以上の分類をまとめると、次表のようになります。


第2編 本論


第1章 原価

第1節 原価の本質

第1項 一般的原価

 原価の概念は、原価計算の目的・範囲が、制度としての原価計算から特殊原価調査までを包摂し多岐にわたっているため、アメリカ会計学会は、「原価の一般概念」を「企業目的にとって原価とは、有形・無形の経済財を取得し、または、作り出す場合に、目的意識的に放出された(または放出される見込みの)価値の評価額にたいする一般的な用語である。」と定義しています。
*アメリカ会計学会1955年度原価概念および基準委員会(The Accounting Review,April 1956,p.183)

第2項 原価計算基準による原価の本質

 原価計算基準では、「原価とは、経営における一定の給付にかかわらせて、は握された財貨又は用役の消費を、貨幣価値的に表したものである」と定義しています。その上で、次の四つの条件を指摘しています。

  1. 原価は、生産に必要な経済価値の消費である。
  2. 原価は、一定の給付、つまり最終給付である「製品」や中間給付である「仕掛品」に転嫁される価値である。
  3. 原価は、生産および販売という経営目的に関連したものである。したがって、生産と販売以外の活動としての財務活動から発生する価値の消費は、原価に含まれない。
  4. 原価は、正常な経営活動の状態で発生した正常な価値の消費額である。したがって、異常な原因によって生じた価値の減少である異常仕損費は非原価となる。

第3項 非原価項目

 原価計算の上で原価に算入しない項目を「非原価項目」といいます。非原価項目には、おおむね次のものがあります。

第2節 原価の諸概念

第1項 実際原価と標準原価

 原価は、財貨の消費量および価格の算定の方法によって、イ、実際原価とロ、標準原価とに区別されます。
イ、実際原価
 実際原価とは、財貨の実際消費量をもって計算した原価をいいます。  実際消費量とは、あくまで正常な経営状態を基礎とした消費量であって、異常消費量は含まれません。
 また、価格の算定は取得価格をもって計算した実際価格ですが、予定価格を用いてもよいこととなっています。

実際原価=実際消費量×実際価格または予定価格

ロ、標準原価
 標準原価とは、財貨の消費量を科学的・統計的にあらかじめ定めた原価標準により、価格は予定または正常価格をもって計算した原価をいいます。
 ここで標準原価には、現実的標準原価、正常原価そして理想的標準原価の3種があり、前2者が標準原価制度で用いられます。なお、実務では、標準原価として予定原価が意味される場合があります。

標準原価=標準消費量×標準価格

第2項 製品原価(product cost)と期間原価(period cost)

 原価は、財務諸表における収益との対応関係により、イ、製品原価とロ、期間原価に区別されます。
イ、製品原価
 製品原価とは、一定単位の製品に集計された原価をいいます。
 通常、売上品および棚卸資産価額を構成する全部製造原価を製品原価とします。

ロ、期間原価
 期間原価とは、一定期間における発生額を収益と対応させて把握したものです。
 通常、販売費および一般管理費を期間原価とします。

第3項 全部原価と部分原価

 原価は、集計される原価の範囲によりイ、全部原価とロ、部分原価とに区別されます。
イ、全部原価
 全部原価とは、一定の給付に対して生ずる全部の原価を集計したものです。すなわち、全部の製造原価で製品原価を計算する全部原価といい、さらに販売費および一般管理費をも加算・集計したものを総原価(全部原価)といいます。

ロ、部分原価  部分原価とは一定の基準に従い一部分の原価のみを集計したものであって、各種のものが考えられますが、原価計算制度においてもっとも重要な部分原価は「直接原価(変動原価)」です。変動費のみで製品原価を計算する直接原価計算では、変動製造原価が製品原価となり、固定製造原価が期間原価となります。

第3節 原価要素の分類

 原価要素は、製造原価要素と販売費および一般管理費の要素に分類されます。
 製造原価要素を分類する基準は、次の通りです。

第1項 形態別分類

 原価要素の形態別分類とは、財務会計における費用の発生を基礎とする分類で、イ、材料費  ロ、労務費  ハ、経費に分けます。
 原価計算は、財務会計から原価に関するこの形態別分類による基礎資料を受け取り、これに基づいて原価を計算するのですから、この分類は、原価に関する基礎的分類であり、原価計算と財務会計との関連の上で重要であるといえます。

イ、材料費
 材料費とは、物品の消費によって生ずる原価をいい、次のように細分されます。

ロ、労務費
労務費とは、労働用役の消費によって生ずる原価をいい、次のように細分されます。 ハ、経費
 経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいい、外注加工費・特許権使用料・減価償却費・棚卸減耗費・電力料などが含まれます。

第2項 機能別分類

 原価が、経営上のいかなる機能のために発生したかによる分類です。購買原価・製造原価・販売費・一般管理費・技術研究費・財務費に分けられます。
 製造原価要素は、機能別分類基準により、材料費は主要材料費と補助材料費・工場消耗品費などに、賃金は作業種類別直接賃金・間接作業賃金・手待賃金などに、経費は各部門の機能別経費に分類されます。

第3項 製品との関連における分類−その1

 製品との関連による分類とは、原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類で、イ、直接費とロ、間接費に分けられます。
イ、直接費
 直接費は、これを直接材料費・直接労務費・直接経費に分類し、さらに必要に応じて細分されます。

ロ、間接費
 間接費は、これを間接材料費・間接労務費・間接経費に分類し、さらに必要に応じて細分されます。

*次の表は、総原価の構成図とよばれるものです。

第4項 製品との関連における分類−その2

 必要がある場合には、製品との関連における分類は、直接材料費と加工費とに分けることがあります。
 加工費には、次のふたつの取扱い方法があります。
イ、直接材料費以外の原価要素を総括する場合
ロ、直接労務費と製造間接費とを合計する場合、すなわち直接材料費・直接経費・加工費とに分ける場合
 総合原価計算においては、原則として(イ)の分類を用いています。

第5項 操業度との関連における分類

 生産設備を一定とした場合におけるその利用度である「操業度」の増減に対する原価発生の態様(cost behavior)による分類で、イ、固定費とロ、変動費とに分けられます。
 製造業に限らずあらゆる業態の企業にとって、現代的なテーマである変動予算の作成、損益分岐点分析、原価管理などのために、この分類はきわめて重要となっています。

イ、固定費(fixed costs)
 固定費とは、操業度の増減にかかわらず固定的に発生し、変化しない原価要素をいいます。ただし、生産量が増加すれば、増加した比率に応じて製品単位原価は減少し、生産量が減少すれば製品単位原価は増加します。例えば支払地代、支払家賃、火災保険料、減価償却費、給料などが挙げられます。


総製造原価…y=bとして表すことができます。

ロ、変動費(variable costs)
 変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいいます。ただし、変動費の製品単位原価は生産量の増減にかかわらず一定です。例えば直接材料費、出来高賃金などが挙げられます。


総製造原価…y=axとして表すことができます。

ハ、準固定費、準変動費、逓増費、逓減費

ニ、固変分解
 なお、準固定費、準変動費、逓増費および逓減費は、次のいずれかの方法により固定費と変動費として取り扱うこととなっています。  このように固定費と変動費とに原価要素を分けることを「原価の固変分解」といい、費目別精査法・スキャッターチャート法・回帰分析法(最小自乗法)などの方法により分解することとなります。

[例題]
下記資料から、原価を固定費と変動費とに分解しなさい。
4月度の操業度は、10,000hで発生原価は30,000,000円
5月度の操業度は、15,000hで発生原価は40,000,000円であった。
[解答]
変動費率をx円/hとし、固定費をy円とする。
4月…10,000x+y=30,000,000
5月…15,000x+y=40,000,000
     −5,000x=−10,000,000
       ∴x=2,000円/h
        y=10,000,000円

ホ、直接原価計算
 固定費と変動費の区別をしないで、全ての原価を製造原価として計算する方法を「全部原価計算」といい、変動費部分のみを製造原価とする原価計算を「部分原価計算」すなわち「直接原価計算」といいます。
 なお、直接原価計算においては、固定費部分は製造原価ではなく、期間原価として取り扱うこととなります。

第6項 原価の管理可能性に基づく分類

 原価の管理可能性に基づく分類とは、原価の発生が一定の管理者層によって管理しうるかどうかによる分類で、管理可能費と管理不能費とに分けられます。
 下級管理者層にとって管理不能費であっても、より上級管理者層にとっては管理可能費となることがある、という意味で、この分類は安定した分類ではありませんが、原価の管理責任を明確化するために重要であるといえます。


第2章 工業簿記の仕組み

第1節 工業簿記の勘定と勘定連絡図

第1項 工業簿記の種類

 まず工業簿記は、イ、商的工業簿記とロ、完全工業簿記とに分けられます。

イ、商的工業簿記
 商的工業簿記とは商業簿記的工業簿記ということであって、製造活動にともなう原価の移転およびその振替記録を行わない簿記です。したがって、そのシステムには、原価計算が含まれません。
 商的工業簿記にあっては、商業簿記と同様に、売上原価や売上総利益の算出を棚卸計算法によって行うこととなります。
 売上原価および売上総利益の算出にあたり、商業簿記においては期末棚卸は商品についてのみ行えばよいのですが、これに対して、商的工業簿記においては期末棚卸高の決定は、材料と仕掛品と製品のそれぞれについて行わなければなりません。



 材料の棚卸は、商品の棚卸と基本的に変わるところがありません。すなわち、材料仕入帳に基づき、平均法・先入先出法・後入先出法・最終仕入原価法などの評価方法により評価することとなります。
 仕掛品および製品の棚卸は、科学的な評価方法としての原価計算を行わないのですから、推定評価という不正確な方法に頼らざるをえません。したがって、売上原価および売上総利益の数字が、正確であるのかどうか不明確にならざるをえないのです。

ロ、完全工業簿記
 完全工業簿記とは、原価計算構造をそのシステムの中に織り込んだ工業簿記の体系で、通常、現代における複式簿記としての工業簿記は、完全工業簿記を指しています。

第2項 工業簿記の勘定

 工業簿記が対象とする製造業においても、商業の場合と同様に、販売活動は必要不可欠ですから、これに関する勘定科目もまた必要です。
 しかし、工業簿記が工業簿記らしいのは、製造業固有の製造活動の記録ですから、製造活動という内部活動に必要な勘定科目がつけ加えられるところにあるといえます。
 工業簿記固有の代表的な勘定科目を、例示すると次のようになります。

材料費勘定、労務費勘定、経費勘定、製造間接費勘定、製造勘定(仕掛品勘定)、製品勘定

 なお、売上時の記帳方法は、商業簿記においては、「分記法・総記法・三分法・売上原価対立法・小売棚卸法」など様様な方法がありますが、工業簿記においては「売上原価対立法」が用いられています。すなわち、売上を計上する時点で、同時に、製品勘定から売上原価勘定への振替を必要します。
 仕訳例を示しておきます。                                               

(売 掛 金)×××  (売  上)×××
(売上原価)△△△  (製  品)△△△

第3項 工業簿記の勘定連絡図

 以上の工業簿記の勘定科目を、製造過程の流れとしてとらえた場合、以下のような勘定連絡図として表すことができます。

第2節 帳簿組織

 工業簿記もまた複式簿記の一形態ですから、その帳簿組織は体系的なイ、主要簿とロ、補助簿によって構成されています。
 商業簿記にみられる補助簿が備え付けられることはもちろんのこと、さらに内部活動の記録のために多くの補助簿が設けられます。なお、補助簿は、補助記入帳と補助元帳に分かれることは周知のことであろうと思われます。
 補助記入帳は、記録の重複記入や元帳転記の煩雑さをを避けるために、「特殊仕訳帳」として機能させ、月末毎に総勘定元帳への合計転記が行われることとなります。さらに、各帳簿は事務の合理化のため伝票や計算表を利用して、迅速正確を期す工夫がなされ、最近ではコンピュータの導入が主流となっています。


第3節 財務諸表

 各企業は、期末における経営成績および財政状態を外部の利害関係者に報告するために、会計帳簿に基づき、財務諸表を作成しなければなりません。
 証券取引法による財務諸表規則によれば、財務諸表は、損益計算書・貸借対照表・附属明細表・利益金処分計算書が挙げられ、商法によれば、貸借対照表・損益計算書・附属明細書・利益の処分に関する議案および営業報告書から成り立っています。
 前者は、いわゆる大企業を対象としており、企業情報の社会に対する影響が広範囲かつ大ですから、より詳細な厳密な経理開示が要求されています。後者は、大企業から零細な企業まですべての企業を対象としていますので、前者に比して、より緩やかな最小限度の開示の水準を示しているといえます。
 いずれであれ、製造業においては損益計算書の売上原価および当期製品製造原価の明細表として「製造原価報告書」が作成されることとなっています。
 製造原価報告書には、当期総製造費用としての材料費、労務費、経費が表示され、それに期首仕掛品棚卸高を加算し、合計額から期末仕掛品棚卸高を差し引いて、当期製品製造原価を計算、表示することとなっています。
 次にその一例を示しておきます。

[問題]
 次の資料に基づいて、製造原価報告書を作成しなさい。
  1.棚卸資産有高
  期首残高
  期末残高
  (1) 材  料
\140,000
\120,000
  (2) 仕 掛 品
\110,000
\100,000
  2.材料仕入高
\800,000
  3.労 務 費
  (1) 賃金支払高
\390,000
  (2) 期首賃金未払高
\40,000
  (3) 期末賃金未払高
\50,000
  (4) 給料支払高
\230,000
  (5) 期首給料未払高
\20,000
  (6) 期末給料未払高
\20,000
  4.経   費
  (1) 電 力 料
\180,000
  (2) 保 険 料
\140,000
  (3) 減価償却費
\220,000

第3章 原価計算とは?
…その基礎的な考え方および計算

 第四章以下の「原価の費目別計算」「原価の製品別計算」という本論に入る前に、この章では、これから私たちが学ぼうとしている「原価計算」の基本的な考え方と計算について、例題を交えて、概観しておきます。

第1節 個別原価計算

第1項 意義

 個別原価計算は、種類を異にする製品を個別的に生産する生産形態に適用します。具体的には、注文主からの注文に応じて生産される「個別受注製品」の生産形態に適用されます。

第2項 特定製造指図書

 注文主からの注文に応じて特定製品を製造するために、技術部や設計部が製造指図書を作成・発行し、製造現場に製造の命令をします。この命令書を「特定製造指図書」と呼んでいます。
 この特定製造指図書には、製造指図書番号が打たれ、製品の注文主・名称・規格・数量・着手日・完成要求日などが記載されます。また、材料仕様書・作業仕様書などが添付されることとなっています。
 なお、原価計算係は、この製造指図書の写しを受取り、製造指図書番号にしたがって「原価計算表」を作成し、その製品に要した原価を集計しなければなりません。

第3項 個別原価計算の計算方法−その1

 原価を発生のつど整理分類して、特定製造指図書ごとに集計し、製品原価は製品の生産完了時に算定します。

[例題1]次の資料に基づき、勘定連絡図を記入し、原価計算表を完成しなさい。併せて、仕訳を示しなさい。

(1) 当月の生産に要した材料費300,000円、労務費270,000円、経費130,000円であった。内訳は、製造指図書#11の材料費190,000円、労務費140,000円、経費80,000円、#12の材料費110,000円、労務費130,000円、経費50.000円であった。なお、#11は月末に完成している。

(2) 当月の生産に要した材料費600,000円、労務費430,000円、経費260,000円であった。内訳は、製造指図書#21の材料費420,000円、労務費310,000円、経費190,000円、#22の材料費180,000円、労務費120,000円、経費70.000円であった。なお、#21は月末に完成している。

(3) 当月の生産に要した材料費520,000円、労務費280,000円、経費150,000円であった。内訳は、製造指図書#31の材料費170,000円、労務費90,000円、経費60,000円、#32の材料費230,000円、労務費120,000円、経費30.000円であり、#33の材料費120,000円、労務費70,000円、経費60.000円であった。なお、#31および#32は月末に完成し、#31は400,000円にて掛販売をしている。

(4) 当月の生産に要した材料費320,000円、労務費245,000円、経費170,000円であった。内訳は、製造指図書#101の材料費110,000円、労務費105,000円、経費65,000円、#102の材料費160,000円、労務費100,000円、経費85.000円であり、#103の材料費50,000円、労務費40,000円、経費20.000円であった。なお、#101および#102は月末に完成し、#101は350,000円にて掛販売をしている。

(5) 当月の生産に要した材料費860,000円、労務費673,000円、経費549,000円であった。内訳は、製造指図書#201の材料費410,000円、労務費362,000円、経費284,000円、#202の材料費325,000円、労務費197,000円、経費127.000円であり、#203の材料費125,000円、労務費114,000円、経費138.000円であった。なお、#201および#202は月末に完成し、#201は 1,430,000円にて掛販売をしている。

[例題1・解答]
[問題(1)・解答]
手順1、個別原価計算の解法上の手順は、まず製造指図書別の原価を集計するための「原価計算表」を作成します。
 原価計算表には、右列および下段に合計欄を作成し、計算しておく必要があります。

原価計算表(票)
製造指図書番号
#11
#12
合 計
直接材料費
190,000
110,000
300,000
直接労務費
140,000
130,000
270,000
直接経費
80,000
50,000
130,000
合 計
410,000
290,000
700,000
(完成)
(未完成)

手順2、次に、原価の流れを「勘定連絡図」に表してみます。
 さて、上記の原価計算表でいえば、右列合計欄が「製造勘定の借方」に照応していること、下段合計欄が「製造勘定の貸方」に照応していることに注目してください。

手順3、「仕訳から元帳転記をする」のが簿記の大原則ですが、工業簿記では、このように総勘定元帳の流れを把握してから「仕訳」をするのが、解法のポイントです。

(製 造)700,000(材料費)300,000
(労務費)270,000
(経 費)130,000

(製 品)410,000(製 造)410,000

[問題(2)・解答]…各自、確かめてみてください。

[問題(3)・解答]

原価計算表(票)
製造指図書番号
#31
#32
#33
合 計
直接材料費
170,000
230,000
120,000
520,000
直接労務費
90,000
120,000
70,000
280,000
直接経費
60,000
30,000
60,000
150,000
合 計
320,000
380,000
250,000
950,000
(完成-販売)
(完成)
(未完成)

(製 造)950,000(材料費)520,000
(労務費)280,000
(経 費)150,000

(製 品)700,000(製 造)700,000

(売掛金)400,000(売 上)400,000
(売上原価)320,000(製 品)320,000

[問題(4)・解答]…各自、確かめてみてください。

[問題(5)・解答]…各自、確かめてみてください。

第4項 個別原価計算の計算方法−その2

 受注生産である個別原価計算では、原価を発生のつど整理分類して、特定製造指図書ごとに集計することについては、上に述べたとおりです。
 さて、製品製造に直接に消費した原価以外の原価、すなわち「製造間接費」もまた、その製品製造に寄与しているのですから、製品の生産完了時に算定する「製品原価」には、製造間接費を負担させる、すなわち含めなければなりません。このように製造間接費を個個の製品の製造原価に負担させることを「製造間接費の配賦」といいます。配賦の基準や方法については、第9章で詳述することとして、ここでは、簡単な計算例を挙げておきます。

[例題2]次の資料に基づき、勘定連絡図を記入し、原価計算表を完成しなさい。併せて、仕訳を示しなさい。

(1) 当月の生産に要した直接材料費300,000円、直接労務費270,000円、直接経費130,000円であった。内訳は製造指図書#101の直接材料費190,000円、直接労務費140,000円、直接経費80,000円、#102の直接材料費110,000円、直接労務費130,000円、直接経費50.000円であった。なお、#101は月末に完成している。 なお、当月の製造間接費は、450,000円であった。よって、各製品に直接材料費をもって按分負担させることとした。

(2) 当月の生産に要した直接材料費600,000円、直接労務費430,000円、直接経費260,000円であった。内訳は製造指図書#201の直接材料費420,000円、直接労務費310,000円、直接経費190,000円、#202の直接材料費180,000円、直接労務費120,000円、直接経費70.000円であった。なお、#201は月末に完成している。 なお、当月の製造間接費は、240,000円であった。よって、各製品に直接材料費をもって按分負担させることとした。

[例題2・解答]
[問題(1)・解答]
手順1、個別原価計算の解法上の手順とおり、まず製造指図書別の原価を集計するための「原価計算表」を作成します。

原価計算表(票)
製造指図書番号
#101
#102
合 計
直接材料費
190,000
110,000
300,000
直接労務費
140,000
130,000
270,000
直接経費
80,000
50,000
130,000
製造間接費
450,000
合 計
1,150,000
(完成)
(未完成)

手順2、個別製品ではなく、工場全体で発生した原価である「製造間接費」を各製品に負担させる、つまり、製造間接費450,000円を、XとYに配賦します。

手順3、次に、原価の流れを「勘定連絡図」に表してみます。

手順4、勘定連絡図を確認しながら、仕訳をします。
(製 造)700,000(材料費)300,000
(労務費)270,000
(経 費)130,000

(製 造)450,000(製造間接費)450,000

(製 品)695,000(製 造)695,000

[問題(2)・解答]…各自、確かめてみてください。

第2節 総合原価計算

第1項 意義

 製品を反復連続的に生産する生産形態に適用します。具体的には、大量見込生産製品の生産形態に適用されます。
 量産する製品の種類により、次の通りに分けられます。

  1. 同種製品、すなわち単一種類の製品を量産する生産形態に適用される「単純総合原価計算
  2. 同種製品ではあるが、形状・大きさ・品位などにより等級に区別される製品を量産する生産形態に適用される「等級別総合原価計算
  3. 異種製品、すなわち複数種類の製品を量産する生産形態に適用される「組別総合原価計算

第2項 継続製造指図書

 生産計画通りに製造作業を進めるために、技術部や設計部が製造指図書を作成・発行し、製造現場に製造の命令をします。この命令書を「継続製造指図書」と呼んでいます。この製造指図書には、製品の・名称・規格・数量・着手日・完成日などが記載されます。また、材料仕様書・作業仕様書などが添付されることとなっています。
 なお、原価計算は、この製造指図書によって生産された製品の生産量ではなく、同種量産品を取り扱う総合原価計算では、一原価計算期間における総生産量から1単位あたりの製造原価を算出することとなっています。

第3項 計算方法

 一原価計算期間(1ヵ月間)に発生したすべての原価要素を集計して、当期製造費用を求め、これを完成品と期末仕掛品とに分割計算して、完成品総合原価を計算し、これを製品単位に均分して、単位原価を計算します。

第4項 総合原価計算の解法

 総合原価計算の解法としては、一般的には、公式法やワークシート法(いわゆる番場方式−番場嘉一郎 一橋大学名誉教授−)がありますが、ここでは、私たちの「データ方式」をごく簡単に説明します。
 データ方式の解法手順は、以下の通りです。

手順1、まず、勘定連絡図を書いて、原価の流れを把握します。


手順2、つぎに、製造勘定を「直接材料費−仕掛」と「加工費−仕掛」とに分解します。

 製造原価を「製品との関連における分類−2」にしたがい、製造過程をふたつの流れに分けて考えるのが、原則です。 手順3、期末仕掛品の評価額を求めるために、こんどは製造過程を物流的に把握します。そのために、製造データを整理します。

手順4、製造投入原価と製造Dataから、製造Data1単位あたりの原価を、直接材料費と加工費とに分けて、それぞれに算出します。

手順5、製造Data1単位あたりの原価を、期末仕掛品Dataに掛け合わせることによって、期末仕掛品の評価額を求めることができます。

手順6、製造投入原価から期末仕掛品原価を差し引いて、完成品原価を算定します。

手順7、最後に、完成品原価を総生産量で除して、1単位あたりの製造原価を算出します。

[例題3]当月の生産に消費した材料費は 504,000円労務費は 480,000円経費は 276,000円であった。
(1) 生産数量20個で、月末に全部完成した場合の完成品原価と単位原価を求めよ。
(2) 生産数量35個で、月末に全部完成した場合の完成品原価と単位原価を求めよ。
(3) 生産数量20個で、月末に16個完成、残り4個は半分できあがった状態である。この場合の月末仕掛品原価、完成品原価、単位原価を求めよ。 
(4) 生産数量70個で、月末に60個完成、残り10個は3割できあがった状態である。この場合の月末仕掛品原価、完成品原価、単位原価を求めよ。 
(5) 生産数量40個で、月末に30個完成、残り10個は6割できあがった状態である。この場合の月末仕掛品原価、完成品原価、単位原価を求めよ。 

[例題3・解答]


[問題(1)・解答]
手順1、

手順2、

手順3、
直接材料費仕掛品評価額
加工費仕掛品評価額

手順4、
直接材料費完成品原価504,000−0=504,000
加工費完成品原価756,000−0=756,000
完成品原価504,000+756,000=1,260,000
完成品単位原価1,260,000÷20=63,000円/個

[問題(2)・解答]…各自、確かめてみてください。

[問題(3)・解答]
手順1、


手順2、

月末仕掛品は、半分しかできあがっていなかったのですから、完成度は50%ということになります。したがって、( )内には完成度を掛け合わせた数字を入れておきます。つまり、完成した16個と未完成の4個とは、16対4の重みではなく、16対2(=4×50%)の重みの違いがあるといいたいわけです。
なお、完成度のことを「進捗率」といいます。

手順3、
直接材料費仕掛品評価額
加工費仕掛品評価額

手順4、
直接材料費完成品原価504,000−56,000=448,000
加工費完成品原価756,000−84,000=672,000
完成品原価448,000+672,000=1,120,000
完成品単位原価1,120,000÷16=70,000円/個

[問題(4)・解答]…各自、確かめてみてください。

[問題(5)・解答]…各自、確かめてみてください。


第4章 原価の費目別計算

 この章では、原価計算における第一次の計算段階である「原価の費目別計算」について、説明します。
 費目別計算は、一定期間における原価要素を費目別に分類測定する手続きであると同時に財務会計における費用計算でもあります。計算にあたっては、原価要素を形態別分類を基礎とし、これを直接費と間接費とに大別し、機能別分類を加味して行うこととなっていますので、ここでは、(1)材料費、(2)労務費、(3)経費の順に検討します。

第1節 材料費

第1項 意義

 材料費とは、物品の消費によって生ずる原価をいいます。

第2項 分類

 材料費は、一般的には次の通りに細分します。

イ、素材費または原料費
製品の実体を構成する材料の消費額をいいます。
おおむね素材は元来の性質・形態が製品に比較的に生かされたものに用い、原料は化学的変化などを伴って元来の性質・形態とは異なった態様で製品化されるものに用います。
前者の例としては、布地における麻や木綿などが、後者の例としては、プラスチック製品における石油などが挙げられます。
ロ、買入部品費
外部から購入し、そのまま製品に取り付けられて製品の構成部分となる部品の消費額をいいます。例えば、自動車におけるタイヤ・オーディオ類などが挙げられます。
ハ、燃料費
製品製造のための動力・エネルギーを発生させるための燃料で、重油・石炭などを挙げることができます。
ニ、工場消耗品費
製品製造のために補助的に消費される機械油・釘・ボルト・ネジなどの消費額をいいます。
ホ、消耗工具器具備品費
製品製造のために補助的に用いられる工具器具備品で、耐用年数が一年以内、または購入価額が比較的低廉なもの(税法上は一個または一組が10万円未満のもの)の消費高をいいます。例えば、ハンマー・スパナ・切削工具などが挙げられます。
 また、これらに製品との関連における分類を加味させると、次のようになります。
 イ、直接材料費……素材費または原料費、買入部品費
 ロ、間接材料費または加工費……燃料費、工場消耗品費、消耗工具器具備品費

第3項 材料の購入について

イ、購入原価の決定
 材料の購入原価は、原則として材料の購入代価である材料主費に材料副費を加算して求めます。材料副費とは、材料の購入から保管・出庫までのすべての付随費用を指しています。
 したがって、次のように分類することができます。


 理論的には、材料副費のすべてを購入原価に加算するべきですが、実務上の煩雑・困難さを考慮にいれ、内部材料副費の全部または一部を含めないことができます。ただし、外部材料副費を控除することができず、必ず加算・算入しなければなりません。
 なお、購入原価に含めない内部材料副費は、原則として製造間接費となります。

ロ、材料副費の賦課・配賦
 材料副費を材料の購入代価に加算するには、実際の発生額を賦課・配賦する実際配賦法と、一会計期間に発生するであろう材料副費を予測して求めた予定配賦率で配賦する予定配賦法とがあります。
 予定配賦法を用いると、配賦額と実際発生額との間に差額が生じるので、一原価計算期間ごとに、この差額を「材料副費配賦差異勘定」に振り替え、会計期末に材料勘定と材料費勘定に配賦、すなわち按分して加算することとなります。

 なお、材料副費を細分すれば、次のようになります。

a,個別直接材料副費
個個の材料の購入にともなって発生したことが直接的に認識できる材料副費は、当該材料購入代価に賦課、すなわち直接的に全額を加算します。
b,共通直接材料副費
複数の材料の購入にともなって共通的に発生したことが直接的に認識できる材料副費は、個個の各種類別材料に配賦、すなわち按分して加算します。
c,間接材料副費
加算の対象となる材料を直接的に認識できない材料副費を間接材料副費といい、一定の基準にしたがい、すべての個個の材料に配賦します。なお、間接材料副費を配賦する場合、月間の実際発生額を配賦する実際配賦法と予定配賦率で配賦する予定配賦法とがあります。
ハ、予定価格法
 材料の購入原価を予定価格で記帳する方法を「予定価格法」といいます。実際購入価格と予定価格との差額は、「材料受入価格差異勘定」に振り替え、会計期末に材料勘定と材料費勘定に配賦しなければなりません。材料費勘定に配賦された差額は、さらに仕掛品・製品・売上原価に配賦することとなります。

ニ、材料の購入手続

第4項 材料費計算

イ、材料費の計算方法

ロ、材料消費量の計算
 材料の消費量の把握には、a,継続記録法、b,棚卸計算法、c,逆計算法があります。

ハ、材料消費単価の計算
 材料の消費単価は、その材料の購入単位原価ですが、同種材料であっても購入原価が異なる場合には、材料消費単価の計算が必要となります。その計算方法には、次のようなものがあります。
ニ、予定価格法による材料消費単価  材料の出庫時に、実際価格を用いずに予定単価を用いる方法で、実際払出単価と予定価格との差額は「材料消費価格差異勘定」に振り替え、期末に、売上原価に賦課することとなります。
 なお、受入時にも予定価格を用いる方法と、実際価格を用いる方法との二つの方法があります。

[例題1]次の条件に基づき、材料元帳への記入を行いなさい。

[解答]




[問題1]次の取引を仕訳しなさい。
(1) 素材1,500個を製造指図書#8に賦課した。なお、素材の月初棚卸高は500個 @\800 当月購入高は2,000個 @\750で総平均法によっている。
(2) 買入部品50個を製造指図書#9のため、また10個を機械修理用に払い出した。なお、買入部品費の月初棚卸高は60個 @150 当月購入高は100個 @\180後入先出法によっている。
(3) 工場消耗品を間接費として処理した。なお、工場消耗品の月初棚卸高は100kg @\52 当月購入高は 200kg @55 月末棚卸高は120kgで、移動平均法によっている。
(4) 素材の実地棚卸数量は990個であった。

[問題2]次の勘定科目を用いて材料に関する仕訳を示しなさい。
材料  仕掛品  製造間接費
(1) 直接材料費の月初在庫は100トン @\200、月間の買入高は1,980トン @\220、月間の直接材料の払出高は2,000トン、月末在庫は79トンであった。棚卸減耗は正常の数量である。払出材料の評価は後入先出法による。
(2) 当月の主要材料Aの払出量は1,000トンである。この材料の月初の在高は100トン @\50、月間の買入高は1,000トン @\60、月末の在高は99トンであった。材料費の計算は先入先出法による。材料の減耗費は正常な数量である。(a)材料払出と(b)減耗処理の仕訳。

第5項 期末材料棚卸高の把握

イ、帳簿棚卸法
 材料消費量の把握に用いる継続記録法による「材料元帳」の期末(月末)残高は、あるべき期末材料棚卸高を示しています。そのあるべき残高と実地棚卸による実際有高とを比較すれば、材料不足額が捕捉されます。
 帳簿棚卸高と実地棚卸高との差額は、「材料棚卸減耗費」として会計処理をして、材料元帳残高を修正しなければなりません。
 材料棚卸減耗費は、材料の変質、蒸発、目減りなど通常の材料管理上やむを得ない、または必然的に発生する「棚卸減耗費」と、異常な原因によって発生する「異常棚卸減耗損」とに区別することが、材料管理とその責任の観点から重要となります。
 なお、前者の正常原因から生じる「棚卸減耗費」は、原価性があるので、経費の一部を構成し、製造間接費に振り替えられることとなり、後者の「異常棚卸減耗損」は、損益計算書の特別損失に計上されることとなります。

ロ、実地棚卸法
 材料の実地棚卸は、財務諸表が作成される準備段階すなわち会計期末には必ず行う必要があります。しかし、原価管理上の観点からは、年間を通して毎月、毎週、毎日といった定期に行うのが望ましいといえます。
 実地棚卸は、材料の実地有高を確認して、確認の終わった保管棚に棚卸表を貼付して、二重棚卸や棚卸漏れのないようにしなければなりません。また、棚卸表の貼付の終わった材料については、実地棚卸計算表に転記して、帳簿残高との照合に用いられることとなります。

第6項 材料費の勘定連絡図

 材料費勘定は、以下の通りです。

 材料費の購入および消費に関する記帳方法には、実際原価による方法と予定価格を用いる方法とがあります。以下、一般的な処理方法を挙げておきます。

イ、原価法による原則法
 材料を購入した時点で、資産勘定としての材料勘定の借方に記入します。
 材料を消費した時点で、材料勘定から原価勘定である材料費勘定に振り替え、さらにその材料消費が直接費であれば製造勘定に、間接費であれば製造間接費勘定に振り替えます。

ロ、原価法による簡便法
 材料を購入した時点で、資産勘定としての材料勘定の借方に記入します。
 材料を消費した時点で、その材料消費が直接費であれば製造勘定に、間接費であれば製造間接費勘定に、材料勘定からダイレクトに振り替えます。

ハ、予定価格法
 材料を購入した時点で、材料勘定の借方に実際価格で記入しておきます。
 材料を消費した時点では、予定価格でもって消費材料(または材料費)勘定から直接費であれば製造勘定に、間接費であれば製造間接費勘定に振り替えます。
 月末など時点で消費材料の実際価格を算出して、材料勘定から消費材料勘定に振り替えます。
 結果、消費材料の実際価格と予定価格の差額は、消費材料勘定の貸借不一致の形であらわれます。借方の実際が小さく、貸方の予定が大きければ、企業にとっては、予定以下の材料費しか消費しなかったのですから、「有利差異」となります。逆に、借方の実際が大きく、貸方の予定が小さければ、差額が貸方にあれば、予定以上の材料費の消費があったのですから「不利差異」ということになります。
 いずれであれ、消費材料勘定の差額を「材料消費価格差異勘定」に振り替え、期末には売上原価に賦課することとなります。したがって、差異勘定が、貸方残高になっておれば「貸方差異=有利差異」、借方残高になっておれば「借方差異=不利差異」ということになります。

ニ、受入・払出予定価格法
 材料を購入した時点で、材料勘定の借方には予定単価に実際購入数量を乗じた金額で記入します。すなわち、購入時点で、実際単価と予定単価との差額を把握して、直ちに差額を「材料受入価格差異勘定」に記入する方法です。
 材料を消費した時点では、予定価格でもって消費材料(または材料費)勘定から直接費であれば製造勘定に、間接費であれば製造間接費勘定に振り替えます。 月末など時点で消費材料の実際数量を算出して、材料勘定から消費材料勘定に振り替えると同時に、材料受入価格差異勘定から材料消費価格差異勘定に振り替えます。 「材料消費価格差異勘定」は、期末には売上原価に賦課することとなり、「材料受入価格差異勘定」残高は期末材料に配賦することとなります。

[例題2]次の取引を仕訳しなさい。
(1) 材料160個を@120円で掛で購入し、引取運賃800円は現金で支払った。
(2) 材料140個を払い出した。なお、予定価格は@123円とした。
(3) 実際払出単価は@125円であった。よって、この金額を材料勘定から消費材料勘定に振替えた。
(4) 予定消費材料と実際消費材料との差額を材料消費価格差異勘定に振り替えた。
(5) 材料の帳簿残高は20個@125円であるのに対し、実際残高は15個であった。この差額は、通常生ずる程度のものである。

[解答]
(1)材   料
    20,000
  買 掛 金
    19,200
  現   金
800
(2)製   造
17,220
  消費材料
17,220
(3)消費材料
17,500
  材   料
17,500
(4)材料消費価格差異
280
  消費材料
280
(5)棚卸減耗費
625
  材   料
625

[問題3]次の取引を仕訳しなさい。
(1) 素材450個を@\800の予定価格で次のとおり消費した。なお、消費材料勘定を用いている。
  製造指図書#101 200個 製造指図書#102 175個 機械修理用 75個
(2) 素材の実際価格は@\810であった。
(3) 予定価格による消費高と実際価格による消費高との差額を処理した。
(4) 会計期末に、上記差額を売上原価勘定に振り替えた。

[問題4]次の資料もとづいて、材料に関する仕訳を示しなさい。なお、消費材料勘定は用いない方法によること。
資料
(1) 材料250個を@\700で掛で購入した。
(2) 材料を直接材料として130個、間接材料として70個払い出した。なお、予定価格は@\720とした。
(3) 実際払出価格は@\710であった。よって、予定価格による消費額と実際価格による消費額との差額を、材料消費価格差異勘定に振り替えた。

第7項 材料の購入・出庫と記帳関係

 材料が購入されると、「材料仕入帳」に記入されます。材料仕入帳(特殊仕訳帳)から、買掛金元帳(仕入先元帳ともいいます)および材料元帳の補助元帳に「個別転記」がなされます。
 また、材料倉庫から材料が払い出されると「材料仕訳帳」に記入されます。製造指図書番号の付された出庫伝票に基づき払い出された場合は、原価計算表(票)に、製造指図書番号のない出庫伝票に基づき払い出された場合は、


第2節 労務費

第1項 意義

 労務費とは、労働用役の消費によって生ずる原価をいいます。

第2項 分類

 労務費は、一般的には次の通りに細分します。

イ、賃金
製造現場従事者である工員に対して支払われる給与を「賃金」といい、基本賃金のほか時間外手当や作業手当などの加給金も含まれます。その支払方法には、作業従事時間を基準とする時間給制と製品の出来高を基準とする出来高給制があります。前者には、時間給・日給・日給月給・月給などがあり、後者には単純出来高給・差別出来高給などがあります。
製品の製造に直接に従事する直接工に対して支払われる賃金は、直接労務費となります。また、間接作業である修繕・運搬・清掃などに従事する間接工およびこれらの作業に一時的に従事した直接工の賃金は、間接労務費となります。
ロ、給料
工場事務員、技師や部門管理者に対して支払われる給与を「給料」といい、間接労務費となります。一般的に月給制が採られています。
ハ、雑給
臨時工、季節工やパートタイマーに対して支払われる給与を「雑給」といい、間接労務費となります。
ニ、従業員賞与手当
工員や職員など従業員に支払われる賞与および通勤、扶養家族、住宅などの作業内容と関係のない諸手当で、間接労務費となります。 なお、役員賞与は、これに含まれません。
ホ、退職給与引当金繰入額
労働協約などに基づく会社の退職給与規定により計上される退職給与引当金繰入額のうち、工場従業員に関する部分で、間接労務費となります。
ヘ、福利費
法定福利費ともいい、健康保険法・厚生年金保険法・労働者災害補償保険法・雇用保険法に基づく社会保険料の事業主負担額のうち工場従業員に関する部分で、間接労務費となります。
なお、従業員本人の負担部分は、賃金や給与の一部を構成します。 また、福利施設負担額や従業員の衛生・保健・慰安などの厚生費は、原価計算基準の分類では、経費として取り扱うこととなっています。
 また、これらに製品との関連における分類を加味させると、次のようになります。
イ、直接労務費……直接工が直接作業に従事した賃金
ロ、間接労務費……間接工賃金、直接工間接作業賃金、手待賃金、休業賃金、
給料、従業員賞与手当、退職給与引当金繰入額、福利費

第3項 賃金の支払について

イ、支払賃金の計算
 支払賃金の計算方法には、時間給・日給・日給月給・月給などの「時間給制」と単純出来高給・差別出来高給などの「出来高給制」があります。

ロ、支払賃金の記帳
 賃金計算係は、出勤票(作業時間報告書または出来高報告書)に基づいて、従業員ごとに支払賃金を計算し、「賃金計算表(賃金台帳)」を作成します。さらに、これに加給金、諸手当を加えた支給総額と、所得税および社会保険料などの控除額を差し引いた正味支給額とを一覧にした「賃金支払帳(給与支給表)」を会計係に回付し、これに基づき給与支払が行われます。

第4項 労務費計算

イ、直接労務費の計算
 直接工が直接作業に従事した場合の直接労務費は、次の計算式によって算出します。

ロ、消費賃率
 直接工の消費賃率には、次のような種類がありますが、職種別平均賃率の採用が製品原価計算上望ましいとされています。  また、実際賃率は、月末にならないと計算できないので、製品原価の計算の迅速性に欠けます。したがって、実務上は予定賃率がよく用いられています。

ハ、間接労務費の計算
 直接工が直接作業以外の作業に従事した時間や手待ち時間(idle time…工員には責任のない原因により作業ができずに待機している時間)部分は、間接労務費となります。  間接工についての作業時間もまた作業時間報告書で把握している場合は、直接労務費と間接労務費とに分離することができますが、そうでない場合は、間接工賃金の要支払額が、間接労務費となります。なお、ここで「要支払額」とは、当月の賃金支払高から前月未払高を差し引き、当月未払高を加算した額となります。
 さて、賃金の支払計算において「未払高」が発生するのは、たとえば、4月21日から5月20日までの労働時数に対して賃金を5月25日に支払うというような給与計算をしている場合です。下図のように、原価計算期間である5月部分との間に食い違いがおきるのです。
 また、たとえ5月1日から31日の労働時数に対し賃金を5月25日に支払う場合であっても超過勤務手当計算などにおいては、上述のような未払が実務上発生します。

したがって、労務費勘定は、以下のようになっています。

*材料費勘定と労務費勘定を対比しておきます。

第5項 労務費の勘定連絡図

イ、原則

ロ、簡便法

ハ、予定賃率法

第3節 経費

第1項 意義

 経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいいます。

第2項 分類

 経費は、機能別分類を加味して細分すると、以下のようになります。

第3項 経費計算

二、月割経費
イ、支払経費外注加工賃、旅費交通費保険料、賃借料
ロ、測定経費電力料、ガス代、水道料
ハ、発生経費減価償却費、棚卸減耗費

第4項 経費の勘定連絡図

イ、原則法

ロ、予定価格法



[例題3]次の取引を仕訳しなさい。

[材料費会計]
(1) 材料320個を@240円で掛で購入し、引取運賃3,200円は現金で支払った。
(2) 製造指図書#1用として、材料280個を払い出した。なお、予定価格は@246円とした。
(3) 実際払出単価は@250円であった。よって、この金額を材料勘定から消費材料勘定に振替えた。
(4) 予定消費材料と実際消費材料との差額を材料消費価格差異勘定に振り替えた。
(5) 材料の帳簿残高は40個@250円であるのに対し、実際残高は35個であった。この差額は、通常生ずる程度のものである。

[労務費会計]
(1) 当月初めに前月未払賃金(7/21〜7/31)165,000円を未払賃金勘定から賃金勘定へ振り替えた。
(2) 当月の賃金消費額(8/1〜8/31)を予定平均賃率1時間あたり250円で計上した。作業時間は1,750時間であった。(消費賃金勘定を用いること)
(3) 7/21〜8/20の支払賃金を計算し 8/25に支払った。支給総額は 450,000円でこれから社会保険料、源泉所得税など60,000円控除し、残額を現金で支払った。
(4) 当月末の未払賃金(8/21〜8/31)を予定平均賃率で計算すると160,000円であった。そこでこれを賃金勘定に計上し、差額を賃率差異勘定に振り替えた。

[解答]

[材料費会計]
(1)材  料
  80,000
  買 掛 金
76,800
  現  金
3,200
(2)製  造
68,880
  消費材料
  68,880
(3)消費材料
70,000
  材  料
70,000
(4)材料消費価格差異
1,120
  消費材料
1,120
(5)棚卸減耗費
1,250
  材  料
1,250

[労務費会計]
(1)未払賃金
  165,000
  賃  金
  165,000
(2)製  造
  437,500
  消費賃金
  437,500
(3)賃  金
450,000
  預 り 金
60,000
  現  金
390,000
(4)賃  金
160,000
  未払賃金
160,000
消費賃金
445,000
  賃  金
445,000
賃率差異
7,500
  消費賃金
7,500

[問題5]

[労務費会計] 次の取引を仕訳しなさい。ただし、消費賃金については、消費賃金勘定を用いること。
(1) 前月21日から当月20日までの賃金総額\890,000を源泉所得税\53,000と健康保険料\44,000を差し引き、小切手を振り出して支払った。
(2) 当月の消費賃金は予定賃率によって次のとおり計上した。
   製造勘定 \490,000  製造間接費勘定 \390,000
(3) 当月の実際消費賃金は\920,000であった。よって、この金額を賃金勘定から消費賃金勘定に振り替えた。
(4) 月末に予定消費賃金と実際消費賃金との差額を賃率差異勘定に振り替えた。

[経費会計] 5月中の経費に関する下記の資料にもとづいて、仕訳をしなさい。
(1) 減価償却費年間償却総額  
\480,000
(2) 修繕費当月支払高
\70,000
前月未払高
\25,000
次月分前払高
\5,000
(3) 電力料当月支払高
\6,000
当月測定高
\7,500
(4) 外注加工費当月支払高
\75,000
当月分未払高
\25,000

[問題6]

[材料費会計] 次の資料にもとづいて、材料に関する仕訳を示しなさい。なお、消費材料勘定は用いない方法によること。
資料
(1) 材料200個を@\850で掛で購入した。
(2) 材料を直接材料として120個、間接材料として50個払い出した。なお、予定価格は@\880とした。
(3) 実際払出価格は@\860であった。よって、予定価格による消費額実際価格による消費額との差額を、材料消費価格差異勘定に振り替えた。

[労務費会計] 次の勘定科目を用いて下記の取引を仕訳しなさい。
 当座預金   預 り 金   賃  金   製  造   製造間接費   賃率差異
(1) 当年度の予定賃率は作業1時間当り\1,200で、5月中の直接工の実際直接作業時間数は200時間、間接作業時間数は10時間であった。
(2) 5月中の直接工への給与は預り金\45,000差引き\225,000で、小切手を振り出して支給した。
(3) 5月中の給与の賃率差異を該当勘定に振り替える。なお、月初の未払賃金は\30,000で月末の未払賃金は\33,000であった。ともに賃金勘定で繰越すものとする。

[経費会計] 6月中の経費に関する下記の資料にもとづいて、仕訳を示しなさい。
(1) 減価償却費年間償却費
\24,000
(2) 外注加工費前月未払高
\10,000
当月支払高
\20,000
当月未払高
\7,000
(3) 電力料当月支払高
\4,000
当月測定高
\5,000
(4) 修繕費前月未払高
\20,000
当月支払高
\60,000
次月分前払高
\15,000


第5章 単純総合原価計算

第1節 意義

 同種製品を反復連続的に生産する生産形態に適用します。

第2節 勘定連絡図

第3節 原価計算

 総合原価計算においては、投入された原価のうち期末仕掛品原価の評価額を計算して、これを控除した原価をもって「完成品原価」の評価額とするのです。
 したがって、完成品原価算出の公式は、以下のとおりとなります。

第4節 期末仕掛品原価の算定

 さて、期末仕掛品原価の算出方法についての基礎は、すでに説明したところですが、ここでは、期首仕掛品があるという場合について、さらに検討を進めていきましょう。
 期首仕掛品があれば、当期の投入額との組み合わせによって、期末仕掛品原価の評価に影響が表れてくるはずです。
 評価方法として、次の3方法が考えられています。

第1項 平均法

(手順)1.製造勘定を直接材料費部分と加工費部分に分割します。

(手順)2.次ぎに、製造データを整理します。


*製造Dataの作り方のポイントは、必ず右(貸方)から左(借方)へ完成させることです。

(手順)3.
イ、直接材料費が「工程始点で投入」の場合は、Dataのはだかの数字を用い、
ロ、直接材料費が「工程進行に応じて投入」の場合は、Dataの(  )内の数字を用い、
ハ、間接材料費、労務費・経費の加工費は、Dataの(  )内の数字を用います。
*直接材料費を「工程始点ですべて投入する」ということは、期末仕掛品の進捗率のいかんにかかわらず、直接材料費部分に関する限り、期末仕掛品には完成品と同様の直接材料費が消費されています。したがって、製造Dataのうち進捗率の掛け合わせていない「はだかの数字」を用いることになるのです。
*また、直接材料費を、「工程進行に応じて投入する」ということは、加工進捗に応じて投入ということですから、加工費と同様に、製造Dataのうち「(  )内の数字」を用いることになります。

(手順)4.期末仕掛品の評価額は、以下の算出方法により求めることができます。
「平均法」により、期末仕掛品を評価するということは、期首仕掛品部分と当期投入原価部分とがミックスして、期末仕掛品を構成しているという考え方です。したがって、原価もDataもミックス部分すなわち「合計数値」から、期末仕掛品評価額を算出することになります。


したがって、Y.の値をd.で割って、b.を掛け合わせると、期末仕掛品評価額が求められます。

(手順)5.完成品原価を算出します。
合計数値から、期末仕掛品評価額を控除して求めます。

第2項 先入先出法

(手順)1.製造勘定を直接材料費部分と加工費部分に分割します。

(手順)2.次ぎに、製造データを整理します。

(手順)3.
イ、直接材料費が「工程始点で投入」の場合は、Dataのはだかの数字を用い、
ロ、直接材料費が「工程進行に応じて投入」の場合は、Dataの(  )内の数字を用い、
ハ、間接材料費、労務費・経費の加工費は、Dataの(  )内の数字を用います。

(手順)4.期末仕掛品の評価額は、以下の算出方法により求めることができます。
「先入先出法」により、期末仕掛品を評価するということは、「先に製造工程に投入されている」期首仕掛品部分は「先に完成している」という考え方です。したがって、期末仕掛品は、原価もDataも「当期投入部分」のみによって構成されているはずです。「投入数値」から、期末仕掛品評価額を算出することになります。


したがって、X.の値をf.で割って、b.を掛け合わせると、期末仕掛品評価額が求められます。

(手順)5.完成品原価を算出します。
合計数値から、期末仕掛品評価額を控除して求めます。

第3項 後入先出法

 「後入先出法」により、期末仕掛品を評価するということは、「先に製造工程に投入されている」期首仕掛品部分は、「完成しない」で、後から投入された当期投入部分から「完成する」という考え方です。
 逆順法といわれ、実際の製造工程を思い浮かべると、かなり不自然な考え方ということになります。しかし、完成品原価が時価をよく反映するので、インフレーションの激しい時代には、有力な方法であるといわれています。

(手順)1.製造勘定を直接材料費部分と加工費部分に分割します。

(手順)2.次ぎに、製造データを整理します。

(手順)3.
イ、直接材料費が「工程始点で投入」の場合は、Dataのはだかの数字を用い、
ロ、直接材料費が「工程進行に応じて投入」の場合は、Dataの(  )内の数字を用い、
ハ、間接材料費、労務費・経費の加工費は、Dataの(  )内の数字を用います。

(手順)4.期末仕掛品の評価額は、以下の算出方法により求めることができます。
(1)期首仕掛品換算量≧期末仕掛品換算量の場合


したがって、W.の値をe.で割って、b.を掛け合わせると、期末仕掛品評価額が求められます。

(2)期首仕掛品換算量<期末仕掛品換算量の場合


期首仕掛品は、すべて期末仕掛品となり、さらに、当期投入部分の一部も期末仕掛品となるということですから、計算は以下のようになります。

(手順)5.完成品原価を算出します。
合計数値から、期末仕掛品評価額を控除して求めます。

第5節 原価計算表

(後入先出法)については、省略

 この原価計算表は、番場教授による「ワークシート」と呼ばれるもので、評価方法によって、項目の順序が異なっていることに、注目してください。
 さて、作成の仕方は、矢印で指示をしたように、まず、生産量・換算量の数値を、下の方から上の方に加減算しながら、書き込みます。(Data方式によるデータの整理を思い浮かべれば、容易であろうと思います。)
 次に、直接材料費および加工費の金額を、今度は上から入れていきます。期末仕掛品の金額を記入する場合、その直前の行で、一単位あたりの金額を計算して、期末仕掛品生産量または換算量に掛け合わせて、記入します。
 完成品原価を加減算して求め、最後に、完成品単価を算出して終わりです。

[例題1] 
次の資料により、期末仕掛品を評価し、さらに原価計算表を作成しなさい。(評価方法は、それぞれ平均法および先入先出法で解答のこと) 

原価データ
   期首仕掛品原価  直接材料費
486,400円
  加工費
158,000円
   当期投入原価  直接材料費
  2,763,600円
  加工費
  2,002,000円

生産データ
   当期完成品数量  2,000kg
   期首仕掛品数量   400kg (加工進捗率 50%)
   期末仕掛品数量   500kg (加工進捗率 80%)

*直接材料はすべて製造の初めに投入。

[解答]




[問題1] 次の資料により、期末仕掛品を評価し、さらに原価計算表を作成しなさい。(評価方法は、平均法による)
原価データ
  期首仕掛品原価  直接材料費
41,500円
  加工費
17,050円
  当期投入原価
直接材料費
  283,500円  加工費  136,950円

生産データ
   当期完成品数量  4,200kg
   期首仕掛品数量   500kg (加工進捗率 50%)
   期末仕掛品数量   800kg (加工進捗率 25%)
*直接材料はすべて製造の初めに投入。

[問題2] 次の資料により、期末仕掛品を評価し、さらに原価計算表を作成しなさい。(評価方法は、先入先出法による)
原価データ
  期首仕掛品原価  直接材料費
52,800円
  加工費
36,400円
  当期投入原価
直接材料費
  181,500円  加工費  546,000円

生産データ
   当期完成品数量  625kg
   期首仕掛品数量  200kg (加工進捗率 25%)
   期末仕掛品数量  125kg (加工進捗率 60%)
*直接材料はすべて製造の初めに投入。

[問題3] 次の資料により、期末仕掛品を平均法および先入先出法で評価しなさい。
原価データ
  期首仕掛品原価  直接材料費
387,000円
  加工費
137,300円
  当期投入原価
直接材料費
  4,800,000円  加工費  2,950,000円

生産データ
   当期完成品数量  5,800kg                  
   期首仕掛品数量   500kg (加工進捗率 50%)
   期末仕掛品数量   700kg (加工進捗率 50%)
*直接材料はすべて製造の初めに投入。

第6節 総合原価計算における仕損・減損

(1)意義
(a) 仕損…加工の結果、不合格品が発生することがあります。そのような場合を「仕損」といいます。
(b) 減損…原料を加工する過程において、原料が蒸発等により消失することがあります。そのようなケースを「減損」といいます。
いずれも「正常・異常」を区別して取り扱い、異常の場合は、「非原価項目」とします。

(2)正常仕損・減損の取り扱い
イ、度外視法  正常な仕損・減損の原価計算を省略して、期末仕掛品および完成品に負担させる方法です。
a,仕損・減損の進捗率>期末仕掛品の進捗率

 期末仕掛品は、仕損・減損の発生ポイントを経過していないのですから、その負担は、完成品のみに負担させるのが適切です。
 以下、例をあげて、説明します。

原価データ
期首仕掛品   直接材料費  500,000 加工費  330,310
当月製造費用 直接材料費 3,730,000 加工費 5,525,000
生産データ
期首仕掛品120kg(進捗率50%)
完成品数量800kg
仕損品数量 40kg(進捗率x%)・・・「」は100%で計算し、次の「」は25%で計算する
期末仕掛品100kg(進捗率50%)
材料は、工程始点投入。平均法により評価。
期末仕掛品評価額の計算
1)材料費部分
2)加工費部分
期末仕掛品評価額;450,000+328,950=778,950
したがって、完成品原価は
(4,230,000+5,855,310)−778,950=9,306,360

b,仕損・減損の進捗率<期末仕掛品の進捗率

 期末仕掛品は、仕損・減損の発生ポイントを経過しているのですから、その負担は、完成品とともに按分負担させるのが適切です。
期末仕掛品評価額の計算
1)材料費部分
2)加工費部分
期末仕掛品評価額;470,000+344,430=814,430
したがって、完成品原価は
(4,230,000+5,855,310)−814,430=9,270,880

ロ、非度外視法  正常な仕損・減損の原価を算出した上で、期末仕掛品および完成品に負担させる方法です。
a,仕損・減損の進捗率>期末仕掛品の進捗率

 期末仕掛品は、仕損・減損の発生ポイントを経過していないのですから、その負担は、完成品のみに負担させるのが適切です。
期末仕掛品評価額の計算
1)材料費部分
2)加工費部分
期末仕掛品評価額;450,000+328,950=778,950

仕損品評価額の計算
1)材料費部分
2)加工費部分
仕損品評価額;180,000+263,160=443,160

完成品評価額の計算
1)材料費部分
2)加工費部分
完成品評価額;3,600,000+5,263,200=8,863,200
したがって、完成品原価は
8,863,200+443,160=9,306,360


b,仕損・減損の進捗率<期末仕掛品の進捗率

 期末仕掛品は、仕損・減損の発生ポイントを経過しているのですから、その負担は、完成品とともに按分負担させるのが適切です。
 仕損・減損が発生したポイントの段階では、いずれの部分が完成し,いずれの部分が期末仕掛品になるのかが、決定しているわけではありません。この段階では、完成品も期末仕掛品もいずれも進捗率が25%で、その重みは等しい関係にありますので、進捗率を勘案していない「はだかの数字」の比率で、按分負担させるのが、理論的に正しいということになります。
期末仕掛品評価額の計算
1)材料費部分
2)加工費部分
期末仕掛品評価額;450,000+340,425=790,425

仕損品評価額の計算
1)材料費部分
2)加工費部分
仕損品評価額;180,000+68,085=248,085

完成品評価額の計算
1)材料費部分
2)加工費部分
完成品評価額;3,600,000+5,446,800=9,046,800

さて、仕損・減損部分の期末仕掛品への追加配賦は、
同じく、仕損・減損部分の完成品への追加配賦は、

したがって、期末仕掛品原価は
(450,000+20,000)+(340,425+7,565)=817,990
また、完成品原価は
(3,600,000+160,000)+(5,446,800+60,520)=9,267,320


第6章 等級別総合原価計算

第1節 意義

 同種製品を連続生産するが、その製品を形状、大きさ、品位などによって、等級に区別する場合に適用します。

第2節 原価計算

 等級別原価計算は、同一工程において連続的に生産される同種製品、すなわち、ガラス製品・ゴム製品・酒類製品などの製造形態に適用されます。
 それぞれの製品は、何らかの物量的な差異により、等級別にランク付けされています。
 この物量的な差異を、合理的な基準により、相互に比較衡量するために定められた係数を「等価係数」といいます。この等価係数に生産量を乗じて「積数」を求め、製造原価をこの積数比で各製品に按分します。

第3節 勘定連絡図

第4節 原価計算表

[例題2] 次の資料により、各製品別製造原価を求めなさい。
当月の総製品製造原価  5,088,000円
A製品  生産量 300個 (1個あたり;重量 300g;作業時間 15.0時間)
B製品  生産量 500個 (1個あたり;重量 200g;作業時間 10.8時間)
C製品  生産量 800個 (1個あたり;重量 160g;作業時間  7.5時間)
(1)
重量を基準に等価係数を求め、各製品原価を算出しなさい。
(2)
作業時間を基準に等価係数を求め、各製品原価を算出しなさい。

[解答]

(1)
イ、等価係数を求める
300g:200g:160g=1.5:1:0.8
ロ、積数を求める
A製品 1.5×300個=450
B製品 1.0×500個=500
C製品 0.8×800個=640
 合計 1,590
ハ、積数1単位あたりの原価の計算
5,088,000円÷1,590=@3,200
ニ、各製品原価を求める
A製品 3,200×450=1,440,000円
B製品 3,200×500=1,600,000円
C製品 3,200×640=2,048,000円
ホ、原価計算表を作成
(2)…各自、確かめてください。

[問題4] 次の資料から、等級別原価計算による各製品別の製造原価を計算しなさい。

当月の完成品結合原価  9,990,000円
   1級製品  生産量 2160個(一個あたりの重量 500g)
   2級製品  生産量 2880個(一個あたりの重量 400g)
   3級製品  生産量 1440個(一個あたりの重量 300g)

[問題5] 次の資料から、各製品別の製造原価を等級別原価計算により計算しなさい。

当月の完成品結合原価  5,752,100円
   A製品  生産量 6000kg(1kgあたりの面積 70平方センチメートル)
   B製品  生産量 4500kg(1kgあたりの面積 50平方センチメートル)
   C製品  生産量 2750kg(1kgあたりの面積 35平方センチメートル)


第7章 組別総合原価計算

第1節 意義

 異種製品を、組別に連続生産する生産形態に適用します。

第2節 原価計算

 組別総合原価計算とは、一定の生産現場において、二つ以上の製品が連続して生産される生産形態に適用される原価計算です。
 ただひとつの製品を生産する生産形態に適用される「単純総合原価計算」の場合には、発生した原価のすべてをその製品に負担させるだけでいいのですが、二つ以上の製品が生産される生産形態の場合、各製品ごとに直接に集計できない、すなわち共通的に発生する原価の負担問題を解決しなければなりません。
 この共通的に発生する原価を「組間接費」勘定にて把握します。
 したがって、原価計算上の手順は、次のようになります。

  1. 製造費用を組直接費と組間接費とに分ける。
  2. 組直接費は、各製品に賦課する。
  3. 組間接費は、適当な配賦基準により各製品に配賦する。
  4. 完成品総合原価=(期首仕掛品原価+当期製造費用)-期末仕掛品原価

第3節 勘定連絡図

第4節 期末仕掛品原価の算定

 期末仕掛品原価の評価方法や算出の手順については、「単純総合原価計算」と変わるところがありませんので、当該の章を参照してください。
 なお、組間接費は、加工費として取り扱うこととなっています。

[例題3]  次の資料により、組別総合原価計算を行いなさい。なお、月末仕掛品の評価方法は平均法による。また、組間接費の配賦は、直接作業時間を基準として行う。
(イ)生産データ  A組製品  B組製品
月初仕掛品
200(50%)
160(25%)
月末仕掛品
300(40%)
360(50%)
完成品
2,700
2,160

    材料は工程の始点で投入される。
    仕掛品の( )内は、加工費の進捗率である。
(ロ)原価データ
A組製品
B組製品
月初仕掛品原価  材料費
94,400円
70,600円
  加工費
281,800円
96,500円
当月製造費用  材料費
  1,363,600円
  1,227,200円
  直接加工費
1,194,200円
1,195,000円
                 組間接費        2,475,000円
(ハ)当月直接作業時間
   A組製品
   B組製品
直接作業時間
   5,940h
3,960h

[解答]





[問題6] 次の資料によって、組別総合原価計算表を作成しなさい。
(1) a 期首仕掛品    A組    B組
  1. 材料費
\43,750
\50,000
  2. 加工費
75,000
95,000
b 作業報告
  1. 直接費
   (イ) 材料費
  \475,000
  \310,000
   (ロ) 加工費
375,000
300,000
2. 完成品数量
1,250個
1,000個
3. 期末仕掛品
   (イ) 材料費
\51,875
\60,000
   (ロ) 数 量
250個
200個
   (ハ) 完成度
40%
50%

(2) 組間接費は\405,000で、直接加工費を基準として配賦する。
(3) 材料はすべて、作業の最初に投入される。
(4) 期末仕掛品にふくまれる加工費の計算は、平均法による。

[問題7] 次の資料により組製品AおよびBについて組別総合原価計算表を完成しなさい。なお、組間接費(\560,000)の組別配賦は直接労務費を基準としておこなう。また直接材料は製造のはじめにすべて投入されたものとし、仕掛品の評価は平均法によっておこなう。
製品A
製品B
(1) 当期製造費用
  直接材料費
  \200,000
  \180,000
  直接労務費
456,000
320,000
  完成数量
800個
600個
(2) 期首仕掛品
  直接材料費
\25,000
\36,000
  直接労務費
48,000
63,200
(3) 期末仕掛品
  数 量
100個
120個
  作業進捗率
40%
50%


第8章 工程別総合原価計算

第1節 意義

 製造工程が二以上の連続する工程に分けられ、工程ごとにその工程製品の総合原価を計算する場合に適用します。

第2節 原価計算

 工程別原価計算は、単純総合原価計算、等級別総合原価計算、組別総合原価計算のいずれの場合にも考えられるのですが、ここでは、単純総合原価計算における工程別原価計算を例にあげて説明します。

 原価を、その発生場所別にとらえて計算するのが、工程別原価計算の趣旨です。その結果、製品原価をより正確に把握し、さらに原価管理に役立つ資料を提供することができます。
 工程は、職能別・職制上の責任区分(作業区分の原則・責任区分の原則)を考慮した原価の発生場所に設定されます。
 原価計算上の方法としては、「累加法」と「非累加法」とがあります。「累加法」では、一工程から次工程へ振り替えられた工程製品の総合原価を、前工程費として次工程の製造費用に加算します。

第3節 勘定連絡図

(累加法)


(非累加法)

第4節 期末仕掛品原価の算定

 期末仕掛品原価の評価方法や算出の手順については、「単純総合原価計算」と変わるところがありませんので、当該の章を参照してください。
 なお、「累加法」における「前工程費」は、「工程始点投入の材料費」と同様に取り扱い計算してください。
 また、「非累加法」においては、当該工程では完成したものであっても、最終工程において期末仕掛品となった部分についても、当該工程の期末仕掛品として計上しなければなりません。

[例題4] 次の資料により、工程別総合原価計算を行いなさい。なお、月末仕掛品の評価は、第1工程は平均法により、第2工程は先入先出法によることとする。(累加法)
(イ)生産データ     第1工程     第2工程
   月初仕掛品     600(50%)     800(50%)
   月末仕掛品     500(40%)    1,000(40%)
   完成品       2,500       2,300
   材料は工程の始点で投入される。
   仕掛品の( )内は、加工費の進捗率である。
   第1工程完了品は、すべて第2工程にただちに投入する。
(ロ)原価データ  第1工程  第2工程
月初仕掛品原価  材料費  150,000円  材料費
  加工費
105,000円
  加工費
205,700円
  前工程費
  前工程費
474,300円
当月製造費用  材料費
594,000円
  材料費
  加工費
818,400円
  加工費  1,196,000円
  前工程費
  前工程費  各自計算

[解答]



[問題8] 以下の資料にもとづき、累加法による工程別総合原価計算を行いなさい。ただし、月末仕掛品の評価は第一工程では平均法、第二工程では先入先出法を用いること。(第一工程の完成品はすべて第二工程へ振り替えられる。)
(1) 生産データ  第一工程  第二工程
月初仕掛品数量
100kg(1/2)
  150kg(1/3)
月末仕掛品数量
200kg(1/2)
250kg(3/5)
完成品数量 1,000kg  900kg

    なお、原料はすべて第一工程の始点で投入される。
    上記(  )内の数値は、仕掛品の加工進捗度を示している。
(2) 原価データ  第一工程  第二工程
  原料費  加工費  前工程費  加工費
月初仕掛品原価  480,000円  280,000円  568,000円
176,000円
当月製造費用
2,400,000円
1,920,000円
  各自計算
  1,840,000円

[問題9] 以下の第一工程から第二工程を経過して連続生産される製品の生産データおよび原価データにもとづいて、工程別総合原価計算を行い、問の金額を答えなさい。なお、直接材料はすべて第一工程の始点で投入される。また、製品原価の計算は累加法により期末仕掛品の評価は工程ごとの先入先出法による。(  )内は作業進捗度を示す。
資料
第一工程  数  量  直接材料費  加工費
月初仕掛品  1,000個(50%)   190,000円
  84,000円
当月投入  17,000個  3,410,000円
  2,380,000円
月末仕掛品  2,000個(80%)
次工程へ  16,000個
第二工程  数  量  前工程費  加工費
月初仕掛品  4,000個(75%)   640,000円   1,020,000円
当月投入  16,000個  各自計算   3,410,000円
月末仕掛品  2,000個(25%)
完成品  18,000個

問1 第一工程完了品の完成品原価を求めなさい。
問2 第二工程完了品の完成品原価を求めなさい。


第9章 個別原価計算

第1節 意義

 特定の製品を、限定生産する形態の製造工業に用いられる原価計算であり、製品の種類ごとに製造指図書を発行し、それに原価を集計して製品原価を計算します。

第2節 実際原価の計算手続

(1) 第1段階……どのような費用が生じたか(費目別計算)
(2) 第2段階……どこで誰の責任において消費したか(部門別計算)
(3) 第3段階……どの製品のために消費したか(製品別計算)
 以上の三段階のうち、第1段階については、材料費・労務費・経費の各章にて説明したところです。
 第2段階については、この後の「部門別個別原価計算」の章にて説明するとして、ここでは、部門を設けない「単純個別原価計算」に絞って、話を進めます。

第3節 勘定連絡図

第4節 製造間接費の配賦

第1項 意義

 「製造間接費」とは、製造活動において消費された、材料、労働力、サービスなどのうち、特定製品に対して間接的共通的に発生した原価をいいます。

第2項 製造間接費の配賦

 各製品に直接的に集計される原価以外の原価である「製造間接費」もまた、その各各の製品の製造過程に寄与しているはずですから、何らかの基準でもって、負担させなければなりません。製造間接費を各製品の製造原価に負担させることを「配賦」といいます。

第3項 配賦基準

 製造間接費を各製品に按分負担させる基準(配賦基準)の要件として、次のものが挙げられます。
イ、配賦基準数値が、各製品に共通していること。
ロ、製造間接費の発生と関連していること。
ハ、容易に得られる数値であること。 そして、この配賦の基準として、次のようなものがあります。

  1. 価格基準
    1. 直接材料費法
    2. 直接労務費法
    3. 素価法(直接材料費と直接労務費の合計額を配賦基準とするもの)
    4. 直接費法(直接費の合計を配賦基準とするもの)
  2. 時間基準
    1. 直接作業時間法
    2. 機械運転時間法
  3. 数量基準
    1. 生産量法
    2. 重量法
[例題1] 次の資料により、各問に答えなさい。
(1)直接材料費法により、各製造指図表に配賦される製造間接費の額を計算しなさい。
(2)原価計算表を作成しなさい。
(3)勘定連絡図を作成しなさい。
(資料1)期首仕掛品 #1 \100,000
(資料2)各製造指図書に賦課された直接費
指図書番号 # 1# 2# 3
直接材料費
 120,000
200,000
180,000
直接労務費
 220,000
280,000
200,000
直接経費
70,000
50,000
80,000
 (完 成)(完 成)(未完成)

(資料3)製造間接費配賦額  \840,000

[解答]

(1)
イ、配賦率を求める
840,000÷(120,000+200,000+180,000)=1.68円/円
ロ、配賦額を算出する
#1…1.68×120,000=201,600
#2…1.68×200,000=336,000
#3…1.68×180,000=302,400
(2)

(3)

[問題1] 例題1の数値を用いて直接労務費法、素価法、直接費法のそれぞれの方法によって、各製造指図書に配賦される製造間接費の額を計算しなさい。

[問題2]
(1) 直接費法を用いた場合の原価計算表を作りなさい。
(2) 直接費法を用いた場合の勘定連絡図を作りなさい。

第4項 製造間接費の予定配賦

 「製造間接費」は、様様な原価要素から成り立っていますので、原価計算期間(1ヵ月)を単位として集計されることとなります。
 その結果、完成した製品原価を算出することが1ヵ月遅れにもなりかねるという不都合が生じますので、通常、製造間接費は、予定配賦されます。その結果、予定配賦された製造間接費と実際製造間接費発生額との差異は、「製造間接費配賦差異」勘定に振り返られ、期末に「売上原価」に負担させることとなります。


第10章 原価の部門別計算

第1節 意義

 費目別計算において把握された原価要素を、原価部門別に分類集計する手続きをいい、原価計算における第二次の計算段階です。

第2節 原価部門の設定

 原価を部門別に計算する主な目的は、合理的な製品原価の計算と原価管理です。また、部門は、次の諸点を考慮して、設定されます。

  1. 原価の発生を機能別、責任区分別に管理しなければなりません。
  2. 原価要素を分類集計する計算組織上の区分をいいます。
  3. 製造部門と補助部門(補助経営部門・工場管理部門)とに分類します。

第3節 勘定連絡図

    

第4節 部門費計算の手続き

部門費計算の手順は、次のとおりです。

  1. 製造間接費から各部門費への振替
  2. 各補助部門費は、適当な配賦基準にしたがい、各製造部門に配賦します。
    この配賦方法には、次のようなものがあります。
  3. 最終段階では、各製造部門費は、適当な配賦基準にしたがい、製品に配賦します。
[例題2]
(1)次の資料により部門費集計表を完成し、仕訳をしなさい。(間接労務費の配賦基準は、各部門における従業員数とし、間接経費の配賦基準は各部門の面積によるものとします)

(2)次の資料により直接配賦法・相互配賦法により部門費振替表を完成し、仕訳をしなさい。

[解答(1)]
部門費集計表とは、製造間接費のうちの部門共通費を各部門に配賦し、これと各部門に賦課された部門個 別費とを合計し、各部門に配分される製造間接費の額を計算するための表です。

間接労務費の配賦率
240,000÷(14+14+2+6+4)=6,000円/人
間接経費の配賦率
180,000÷(700+600+300+200+200)=90円/平方メートル

[解答(2)」

イ、直接配賦法
 直接配賦法とは、各補助部門へ配賦された製造間接費を、製造部門のみに配賦する方法です。
動力部門費の配賦率
504,000÷(100+100)=2,520円/時間
修繕部門費の配賦率
576,000÷(20,000+30,000)=11.52円/円
工場事務部門費の配賦率
672,000÷(8+7)=44,800円/人


ロ、相互配賦法
 相互配賦法とは、補助部門費の配賦計算で、製造部門ばかりではなく、補助部門にも相互に配賦しあう方法です。この相互配賦法にはいろいろな方法がありますが、ここでは、直接配賦法を加味した相互配賦法を紹介します。
 これは、補助部門費の配賦を2段階に分け、第1次配賦では相互配賦計算を行います。 この結果、他の補助部門から配賦された補助部門費を第2次配賦で製造部門のみに配賦するものです。

(第1次配賦)
動力部門費の配賦率
504,000÷(100+100+500)=720円/時間
修繕部門費の配賦率
576,000÷(20,000+30,000+20,000+10,000)=7.2円/円
工場事務部門費の配賦率
672,000÷(8+7+4+6)=26,880円/人

(第2次配賦)
動力部門費の配賦率
251,520÷(100+100)=1257.6円/時間
修繕部門費の配賦率
521,280÷(20,000+30,000)=10.4256円/円
工場事務部門費の配賦率
72,000÷(8+7)=4,800円/人

[直接配賦法の仕訳]
A製造部門費
 840,800
  動力部門費 504,000
B製造部門費
 911,200
  修繕部門費 576,000
  工場事務部門費
 672,000

[相互配賦法の仕訳]
1、第1次配賦
A製造部門費
 431,040
  動力部門費 504,000
B製造部門費
 476,160
  修繕部門費 576,000
動力部門費
 251,520
  工場事務部門費
 672,000
修繕部門費
 521,280
  
工場事務部門費
 72,000

2、第2次配賦
A製造部門費
 372,672
  動力部門費
 251,520
B製造部門費
 472,128
  修繕部門費
 521,280
  工場事務部門費
 72,000

[問題3] 次の資料によって、階梯式配賦法による部門費振替表を作成し、必要な仕訳を示しなさい。
(資料1)製造間接費の部門別集計額
A製造部門 845,000円修繕部門 220,920円
B製造部門 932,000円工場事務部門 420,000円
動力部門 180,000円

(資料2)補助部門費の配賦基準
配賦基準A製造部門B製造部門動力部門修繕部門工場事務部門
動力部門費機械馬力時間50馬力時間50馬力時間  −9馬力時間    −
修繕部門費修繕時間数  45時間  30時間  9時間   −  6時間
工場事務部門費従業員数  22人  23人   2人   3人   5人

(注) 階梯式配賦法とは、補助部門相互間でやり取りされるサービスの程度を考慮に入れて配賦の順位を決め、これにしたがって順次補助部門費を配賦していく方法です。
 この問題では、まず工場事務部門費を他の製造部門・補助部門に配賦し、ついで修繕部門費、動力部門費という順番で配賦計算を行います。なお、第2順位以下の配賦計算では、当初配賦されている自部門費と他の補助部門から配賦された額の合計額を用い、すでに配賦計算を終わっている補助部門には配賦は行いません。

[問題4] 次の資料によって、相互配賦法による部門費振替表を作成し、必要な仕訳を示しなさい。
(資料1)部門費集計額
A製造部門 350,000円労務部門 30,000円
B製造部門 300,000円工場事務部門 15,000円
動力部門 40,000円

(資料2)第1次配賦率
A製造部門B製造部門動力部門労務部門工場事務部門
動力部門費  40%  40%  −%  10%  10%
労務部門費  40  30  20   −  10
工場事務部門費  45  35  10  10   −

(資料3)第2次配賦率
A製造部門B製造部門
動力部門費  50%  50%
労務部門費  60%  40%
工場事務部門費  55%  45%


第11章 減損・仕損費と作業屑

第1節 意義

(a) 減損…原料を加工する過程において、原料が消失することがあります。そのようなケースを「減損」といいます。
(b) 仕損…加工の結果、不合格品が発生することがあります。そのような場合を「仕損」といいます。
(c) 作業屑…材料のうち、製造過程で製品にならなかった部分であって、一定の経済価値のあるものを「作業屑」といいます。

第2節 計算および処理

総合原価計算
個別原価計算
仕損費 原則として、完成品と期末仕掛品に負担させる (1) 補修……補修原価=仕損費
(2) 全部代品…旧原価=仕損費
(3) 一部代品…新原価=仕損費
ただし、仕損品に評価額があれば見積額を控除して、仕損費とする
減損費 原則として、完成品と期末仕掛品に負担させる
作業屑 評価額(見積売却額など)を算定して総合原価から控除する 評価額(見積売却額など)を算定して部門費or製造原価から控除する

[例題3] 次の(1)〜(5)までの仕訳をしなさい。
(1) 第一製造部門から発生した作業屑を 8,500円と評価した。
(2) 第二製造部門から作業屑が発生した。売却見積価額 5,000円、売却費用 1,000円。
(3) 第三製造部門より発生した作業屑10kgを、第一製造部門でA材料の代替として消費した。節約されたA材料は 5kgで購入価格は 1kgあたり 700円である。
(4) 製造指図書#1の製造工程のプレス部門で、7,000円の作業屑が発生し、材料倉庫に戻入した。他の製品製造原価に関わらせないこととした。
(5) 切削部門で 6、000円の作業屑が発生したので、材料倉庫に戻入した。製造原価に関わらせるため部門費から控除することとした。

[解答]
(1)作業屑 8,500  第一製造部門費 8,500
(2)作業屑 4,000  第二製造部門費 4,000
(3)第一製造部門費 3,500  第三製造部門費 3,500
(4)材料 7,000  製造 7,000
(5)材料 6,000  切削部門費 6,000

[問題5] 製造指図書#101によって、受注品20個の生産に着手したが、そのうちの5個が仕損となったので、製造指図書#101-2を発行し、代品製作をおこなった。製造指図書#101および#101-2に集計された原価は、次のとおりである。
#101
#101-2
直接材料費
200,000円
54,000円
直接労務費
240,000円
63,000円
製造間接費   直接材料費の150%   直接材料費の150%

(1) 仕損費を計算しなさい。
(2) この仕損費を製造指図書#101に直接経費として賦課した場合の仕訳を示しなさい。
(3) この仕損費を製造間接費として処理した場合の仕訳を示しなさい。

[問題6] 次の取引の仕訳を示しなさい。
(1) 材料1,000,000円を掛けで購入した。
(2) 製造指図書#101、#102、#103の製造のため材料800,000円を出庫した。
(3) #101の切削部門での加工中に作業屑10,000円が発生し、これを材料倉庫に戻した。なお、この作業屑の処理は他の#102、#103の製造原価には関係させない。
(4) #102の切削部門での加工中に作業屑15,000円が発生し、これを材料倉庫に戻した。なお、この作業屑の処理は他の#101、#103の製造原価にも関係させるため、当該部門費から控除することとした。


第12章 製造原価報告書

第1節 意義

 原価会計においては、財務諸表付属明細表として「製造原価報告書」が作成されます。
 この製造原価報告書で算出された「当期製品製造原価」が、損益計算書の売上製品原価を計算するための基礎となります。

第2節 例示


[例題4]
次の資料から製造原価報告書を作成しなさい。
(資料1)
棚卸高
材料期首 40,000円期末 30,000円
仕掛品期首 15,000円期末 17,000円

(資料2)
1、材料当期仕入高 500,000円
2、賃金当期支払高 350,000円期首未払高 15,000円期末未払高 20,000円
給料当期支払高 100,000円期末未払高 10,000円
3、経費電力料 32,000円
修繕費 12,000円期末未払高 2,000円
支払保険料 3,500円期首前払高 500円期末前払高 400円
減価償却費 20,000円

4、経費の製造間接費と一般管理費の負担割合
製造間接費 一般管理費
電力料   1   1
修繕費   4   1
支払保険料   3   1
減価償却費   3   2

[解答]
経費のうちの製造間接費負担分
賃金=(350,000−15,000+20,.000)=355,000
給料=(100,000+10,000)=110,000
電力料=32,000×1/2=16,000
修繕費=(12,000+2,000)×4/5=11,200
支払保険料=(3,500+500−400)×3/4=2,700
減価償却費=20,000×3/5=12,000

[問題6] 次の資料から製造原価報告書を作成しなさい。
(資料1)
棚卸高
材料期首 100,000円期末 80,000円
仕掛品期首 55,000円期末 45,000円

(資料2)
1、材料当期仕入高 1,000,000円
2、賃金当期支払高 450,000円期首未払高 25,000円期末未払高 30,000円
給料当期支払高 200,000円
3、経費電力料 45,000円期首前払高 1,500円期末前払高 2,000円
修繕費 30,000円期末前払高 2,000円
支払保険料 35,500円期首前払高 1,000円期末前払高 1,500円
減価償却費 150,000円

4、経費の製造間接費と一般管理費の負担割合
製造間接費 一般管理費
電力料   4   1
修繕費   7   1
支払保険料   3   2
減価償却費   全額製造間接費


第13章 工場独立会計

第1節 意義

 本社と工場とを独立採算制として会計的に独立させることを「工場独立会計」制度といいます。
 商業簿記における「本支店会計」と同様、本社側に工場勘定、工場側に本社勘定を設けます。

第2節 勘定連絡図

[例題5] 次の取引について、本社と工場双方の仕訳をしなさい。ただし、製品勘定は本社に設けられている。
(1)材料 500,000円を掛で仕入れた。
(2)製品の製造のため、材料 300,000円を払い出した。
(3)当月の製品完成高は 1,500,000円であった。
(4)当月の製品売上高は 2,000,000円(全額掛)であった。なお、販売した製品の製造原価は 1,700,000円であった。

[解答]
(1)(工場の仕訳)材料 500,000 本社 500,000
(本社の仕訳)工場 500,000 買掛金 500,000
(2)(工場の仕訳)製造 300,000 材料 300,000
(本社の仕訳)仕訳なし
(3)(工場の仕訳)本社 1,500,000 製造1,500,000
(本社の仕訳)製品1,500,000 工場1,500,000
(4)(工場の仕訳)仕訳なし
(本社の仕訳)売掛金 2,000,000 売上 2,000,000
売上原価 1,700,000製品 1,700,000

[問題7] 次の取引について、本社と工場双方の仕訳をしなさい。
(1) 当社は、本年度から工場独立会計制度を採用することになった。期首貸借対照表のうち、材料 200,000円、仕掛品 450,000円、製品 500,000円を工場元帳に移すこととなった。
(2) 当期の工場の製品完成高は 3,800,000円であった。
(3) 当期の製品の掛売上高は 4,500,000円(全額掛)であった。なお、販売した製品の製造原価は 3,600,000円である。
(4) 当期の製品掛売上高のうち、100,000円の返品があった。

[問題8] 次の取引について、本社と工場双方の仕訳をしなさい。ただし、工場元帳には材料、賃金、経費、製造間接費、製造間接費配賦差異、製造、製品の各勘定を設け、他の勘定は本社の一般元帳に設けている。
(1) 材料を掛買いした。送状価格は350,000円。引取運賃6,000円は現金で支払った。
(2) 直接材料250,000円、間接材料50,000円を庫出しした。
(3) 当月の直接労務費は180,000円、間接労務費は100,000円であった。
(4) 当月分の賃金280,000を、社会保険料預り金5,000円を差し引き、現金で支払った。
(5) 当月分の減価償却費120,000円(経費勘定で処理)を計上した。その他の経費350,000円については現金で支払っている。
(6) 経費はすべて間接経費であり、製造間接費に振り替えた。
(7) 製造間接費の予定配賦額は600,000円であった。
(8) 製品完成高1,000,000円
(9) 製品掛売上高1,200,000円。その原価950,000円。


第14章 標準原価計算
Standard Costing

第1節 意義

  1. 原価管理を効果的にするための原価の標準として「標準原価」を設定します。
    標準原価は、あらかじめ標準となる単位あたりの原価を「原価標準」といい、これに数量を乗じて求めます。
    原価標準×数量=標準原価
  2. 標準原価は、真実の原価として仕掛品、製品などの棚卸資産価額、および売上原価の算定基礎となります。
  3. 標準原価は、予算とくに見積財務諸表の作成に、信頼しうる基礎を提供します。
  4. 標準原価は、これを勘定組織の中に組み入れることによって、記帳を簡略化し、迅速化します。
  5. 標準原価と実際に発生した製造原価とを比較、分析し、原価管理に役立てることを主眼とします。

第2節 勘定連絡図

(1)パーシャルプラン partial plan


(2)シングルプラン single plan

第3節 差異分析

(1) 直接材料費

実際直接材料消費高=実際単価AP×実際数量AQ
標準直接材料消費高=標準単価SP×標準数量SQ
総差異=実際直接材料消費高−標準直接材料消費高
材料消費価格差異=(実際単価AP−標準単価SP)×実際数量AQ
材料消費数量差異=標準単価SP×(実際数量AQ−標準数量SQ)

(2) 直接労務費

実際直接労務費消費高=実際賃率AR×実際直接作業時間AH
標準直接労務費消費高=標準賃率SR×標準直接作業時間SH
総差異=実際直接労務費消費高−標準直接労務費消費高
賃率差異=(実際賃率AR−標準賃率SR)×実際直接作業時間AH
作業時間差異=標準賃率SR×(実際直接作業時間AH−標準直接作業時間SH)

(3) 製造間接費
イ、変動予算と4分法

総差異=実際製造間接費(AHの青線部分)−標準配賦額(SHの緑線部分)
予算差異=実際製造間接費−実際作業時間の製造間接費予算
変動費能率差異=(実際作業時間AH−標準作業時間SH)×変動費率
固定費能率差異=(実際作業時間AH−標準作業時間SH)×固定費率
不働能力差異=(基準操業時間−実際直接作業時間AH)×固定費率

ロ、変動予算と3分法

(第一法)図の標準作業時間(SH…緑線)で分析
総差異=実際製造間接費−標準配賦額
予算差異=実際製造間接費−実際作業時間の製造間接費予算(実際作業時間×変動費率+固定費予算)
能率差異=実際作業時間の製造間接費予算−標準作業時間の製造間接費予算
    =(実際作業時間AH−標準作業時間SH)×変動費率
操業度差異=(基準作業時間−標準作業時間SH)×固定費率

(第二法)図の実際作業時間(AH…青線)で分析
総差異=実際製造間接費−標準配賦額
予算差異=実際製造間接費−実際作業時間の製造間接費予算(実際作業時間×変動費率+固定費予算)
操業度差異=(基準作業時間−実際作業時間AH)×固定費率
能率差異=(実際作業時間AH−標準作業時間SH)×配賦率

 この二つの方法の違いは、4分法における「固定費能率差異」を、工場現場の管理責任である「能率差異」に組み入れるのか、工場管理者の管理責任である「操業度差異」に負担させるのかの「違い」に過ぎません。

[例題1] 次の資料により直接材料費及び直接労務費について差異分析をおこないなさい。
 当月の実際生産量は1,100個であり、直接材料費は6,630,400円(@224×29,600kg)直接労務費は6,174,000円(@1,960×3,150時間)であった。      
 なお、1個あたりの原価標準は直接材料費(@182×28kg)直接労務費は(@1,820×3時間)とする。

[解答]
 直接材料費差異
実際直接材料消費高=@224×29,600kg=6,630,400
標準直接材料消費高=@182×30,800kg=5,605,600
総差異=6,630,400−5,605,600=1,024,800(借方差異・不利差異)
材料消費価格差異=(@224−@182)×29,600kg=1,243,200(借方差異・不利差異)
材料消費数量差異=@182×(29,600kg−30,800kg)=−218,400(貸方差異・有利差異)

 直接労務費差異
実際直接労務費消費高=@1,960×3,150時間=6,174,000
標準直接労務費消費高=@1,820×3,300時間=6,006,000
総差異=6,174,000−6,006,000=168,000(借方差異・不利差異)
賃率差異=(@1,960−@1,820)×3,150時間=441,000(借方差異・不利差異)
作業時間差異=@1,820×(3,150時間−3,300時間)=−273,000(貸方差異・有利差異)
(解説) 本文中にある差異分析図に資料の数値をあてはめて確認してみましょう。

[例題2] 次の資料により製造間接費について差異分析をおこないなさい。 
 当月の実際作業時間は2,100時間であり、製造間接費は4,875,000円であった。
 なお、標準作業時間は2,000時間であり、また、1個あたりの原価標準は@2,250(変動費率@1,050、固定費率@1,200(固定費予算2,640,000、基準作業時間2,200時間))である。

[解答]
変動予算・4分法の場合
総差異=4,875,000−4,500,000=375,000(借方差異・不利差異)
予算差異=4,875,000−(@1,050×2,100時間+2,640,000)=30,000(借方差異・不利差異)
変動費能率差異=(2,100時間−2,000時間)×@1,050=105,000(借方差異・不利差異)
固定費能率差異=(2,100時間−2,000時間)×@1,200=120,000(借方差異・不利差異)
不働能力差異=(2,200時間−2,100時間)×@1,200=120,000(借方差異・不利差異)

変動予算・3分法(第一法)の場合
総差異=4,875,000−(@2,250×2,000時間)=375,000(借方差異・不利差異)
予算差異=4,875,000−(2,100時間×@1,050+2,640,000)=30,000(借方差異・不利差異)
能率差異=(2,100時間−2,000時間)×@1,050=105,000(借方差異・不利差異)
操業度差異=(2,200時間−2,000時間)×@1,200=240,000(借方差異・不利差異)

変動予算・3分法(第二法)の場合
総差異=4,875,000−(@2,250×2,000時間)=375,000(借方差異・不利差異)
予算差異=4,875,000−(2,100時間×@1,050+2,640,000)=30,000(借方差異・不利差異)
操業度差異=(2,200時間−2,100時間)×@1,200=120,000(借方差異・不利差異)
能率差異=(2,100時間−2,000時間)×@2,250=225,000(借方差異・不利差異)
(解説) 本文中にある差異分析図に資料の数値をあてはめて確認してみましょう。

[問題1] 次の資料により差異分析をおこないなさい。(製造間接費については変動予算・4分法によること)
当月の実際原価の発生額は、直接材料費は、6,762,000円(@350×19,320個)直接労務費は、2,881,200円(@1,960×1,470時間)製造間接費は、4,116,000円の合計12,583,200円であった。
なお、1個あたりの原価標準は次のとおりである。
   直接材料費 @322×20個=6,440
   直接労務費 @1,750×1.4時間=2,450
   製造間接費 @2,590×1.4時間=3,626
   (変動費率@1,190、固定費予算2,263,800円、基準作業時間1,617時間)
   また、当月の実際生産量は1,000個であった。

[解答]
 直接材料費差異
実際直接材料消費高=@350×19,320kg=6,762,000
標準直接材料消費高=@322×20,000kg=6,440,000
総差異=6,762,000−6,440,000=322,000(借方差異・不利差異)
材料消費価格差異=(@350−@322)×19,320kg=540,960(借方差異・不利差異)
材料消費数量差異=@322×(19,320kg−20,000kg)=−218,960(貸方差異・有利差異)

 直接労務費差異
実際直接労務費消費高=@1,960×1,470時間=2,881,200
標準直接労務費消費高=@1,750×1,400時間=2,450,000
総差異=2,881,200−2,450,000=431,200(借方差異・不利差異)
賃率差異=(@1,960−@1,750)×1,470時間=308,700(借方差異・不利差異)
作業時間差異=@1,750×(1,470時間−1,400時間)=122,500(借方差異・不利差異)

 製造間接差異(変動予算・4分法)
総差異=4,116,000−3,626,000=490,000(借方差異・不利差異)
予算差異=4,116,000−(@1,190×1,470時間+2,263,800)=102,900(借方差異・不利差異)
変動費能率差異=(1,470時間−1,400時間)×@1,190=83,300(借方差異・不利差異)
固定費能率差異=(1,470時間−1,400時間)×@1,400=98,000(借方差異・不利差異)
不働能力差異=(1,617時間−1,470時間)×@1,400=205,800(借方差異・不利差異)

[問題2] 次の資料により差異分析をおこないなさい。(製造間接費については変動予算・4分法によること)
当月の実際原価の発生額は、直接材料費は、9,680,000円(@220×44,000個)直接労務費は、10,080,000円(@2,400×4,200時間)製造間接費は、13,000,000円の合計32,760,000円であった。
なお、1個あたりの原価標準は次のとおりである。
   直接材料費 @200×50個=10,000
   直接労務費 @2,500×4時間=10,000
   製造間接費 @3,000×4時間=12,000
   (変動費率@1,400、固定費予算7,040,000円、基準作業時間4,400時間)
また、当月の実際生産量は次のとおりである。
   月初仕掛品300個(加工進捗率50%)、当月着手量900個
   月末仕掛品100個(加工進捗率50%)、完成品1,100個
(ヒント) 直接労務費と製造間接費の当月着手量に注意


第15章 直接原価計算
Direct Costing

第1節 意義

 固定費と変動費の区別をしないで、全ての原価を製造原価として計算する方法を「全部原価計算」といい、変動費部分のみを製造原価(product cost)とする原価計算を「部分原価計算」、すなわち「直接原価計算」といいます。
 なお、直接原価計算においては、固定費部分は製造原価ではなく、期間原価(period cost)として取り扱うこととなります。

 直接原価計算によって、損益分岐点(break even point)における売上高や目標利益達成のための売上高を予測し、利益計画・予算編成に役立つ情報を提供できるようになりました。「損益分岐点分析」といわれています。
 この「損益分岐点分析」により、原価・営業量(売上)・利益の関係(cost-volume-profit relationships)の分析(CVP分析)が可能となりました。

*部分原価計算と直接原価計算…製造原価の対象範囲を部分的に限定して算出する原価計算を「部分原価計算」といい、そのひとつの有力な方法として「直接原価計算」を挙げることができます。
*CVP分析と損益分岐点分析…原価と営業量と利益についての相関関係を分析するのを「CVP分析」といい、そのひとつの有力な方法として、直接原価計算制度による「損益分岐点分析」を挙げることができます。

第2節 固定費と変動費

 生産設備を一定とした場合におけるその利用度である「操業度」の増減に対する原価発生の態様(cost behavior)による分類で、イ、固定費とロ、変動費とに分けられます。
 製造業に限らずあらゆる業態の企業にとって、現代的なテーマである変動予算の作成、損益分岐点分析、原価管理などのために、この分類はきわめて重要となっています。

イ、固定費(fixed costs)
 固定費とは、操業度の増減にかかわらず固定的に発生し、変化しない原価要素をいいます。
 ただし、生産量が増加すれば、増加した比率に応じて製品単位原価は減少し、生産量が減少すれば製品単位原価は増加します。
 例えば支払地代、支払家賃、火災保険料、減価償却費、給料などが挙げられます。



 総製造原価…Y=bとして表すことができます。

ロ、変動費(variable costs)
 変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいいます。
 ただし、変動費の製品単位原価は生産量の増減にかかわらず一定です。
 例えば直接材料費、出来高賃金などが挙げられます。



 総製造原価…Y=aX として表すことができます。

ハ、準固定費、準変動費、逓増費、逓減費
a,準固定費



 ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これを超えると急増し、再び固定化する原価要素を準固定費といい、監督者給料などが挙げられます。
b,準変動費
 操業度が零の場合にも一定額が発生し、同時に、操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素を準変動費といいます。電力費、水道料、電話料などが、このケースにあたります。


c,逓増費、逓減費
 その他、操業度の増減以上の比率で増減する原価要素を逓増費といい、また、操業度の増減以下の比率で増減する原価要素を逓減費といいます。

ニ、固変分解
 なお、準固定費、準変動費、逓増費および逓減費は、次のいずれかの方法により、固定費と変動費として取り扱うこととなっています。
a,これらは、固定費または変動費のいずれかであるとみなして、そのいずれかに帰属させます。
b,これらは、固定費と変動費との合成されたものであると解釈して、これを固定費の部分と変動費の部分とに分解します。
 このように固定費と変動費とに原価要素を分けることを「原価の固変分解」といい、費目別精査法・スキャッターチャート法・回帰分析法(最小自乗法)などの方法により分解することとなります。

[例題] 下記資料から、原価を固定費と変動費とに分解しなさい。
4月度の操業度は、10,000hで発生原価は30,000,000円
5月度の操業度は、15,000hで発生原価は40,000,000円であった。

[解答]
変動費率をx円/hとし、固定費をy円とする。
4月…10,000x+y=30,000,000  
5月…15,000x+y=40,000,000  
    −5,000x=−10,000,000
∴x= 2,000円/h
y=10,000,000円

[問題1] 下記の資料により原価を固定費と変動費とに分解しなさい。
6月度の操業度は、5,400時間で発生原価は810,000円
7月度の操業度は、2,400時間で発生原価は540,000円であった。

[解答]
変動費率をx円/hとし、固定費をy円とする。
6月…5,400x+y=810,000  
7月…2,400x+y=540,000  
       3,000x=270,000
∴x= 90円/h
 y=324,000円

[問題2] 下記の資料により原価を固定費と変動費とに分解しなさい。
8月度の操業度は、1,440時間で発生原価は1,233,600円
9月度の操業度は、1,160時間で発生原価は1,110,400円であった。

第3節 損益分岐点分析

[例題] 当社は、製品Aを製造販売している。さて、本年度の予算原案をつぎの通り設定した。

製品一個あたり売価
¥300
本年度の製品計画販売量
10,000個
変動費予算
製品1個あたり直接材料費
¥45
直接労務費
¥35
変動製造間接費
¥30
変動販売費
¥10
合 計
¥120
固定費予算
年間固定製造間接費
¥600,000
固定販売費および一般管理費
¥300,000
合 計
¥900,000

[設問1] 上記の資料から、損益分岐点を求めなさい。

[解答]
売上高線 y=300x
総原価線 y=120x+900,000
したがって、この二つを連立方程式として、解けばよい。
180x=900,000
x=5,000個
y=1,500,000円
答え…5000個販売(売上高1,500,000円)の点が「損益分岐点」である。

グラフの書き方
まず、固定費線(青線)を表し、y切片900,000のところから、1個につき120円の変動費線(緑線)を書けば、これが「総原価線」となる。さらに、原点から、1個につき300円の売上高線(赤線)を引く。
問題文をすなおにグラフに表現すれば、以上のような手順となるのであるが、「損益分岐点分析図」の書き方は、以下のようになる。
まず、はじめに、原点から、1個につき120円の変動費線(草色)を描き、変動費線を900,000円(固定費)上方に平行移動させる(緑線)と、これが「総原価線」となる。
さらに、原点から、1個につき300円の売上高線(赤線)を引く。

この売上高線と変動費線にはさまれた部分(ピンク線)を「marginal profit(限界利益・貢献利益)」と呼ぶ。
 したがって、「損益分岐点」とは、<売上高=総原価>であるが、いいかえれば、<marginal profit(限界利益・貢献利益)=固定費>の点に、他ならないことがわかるであろう。
 因みに、売上高と変動費との関係から、変動費率を求めることができるであろう。すなわち、120÷300=0.4=40%
 marginal profit率(m率)は、0.6=60%である。
 このような比率関係をグラフに表現するならば、以下のようになる。
 まず、はじめに、原点から、45度線を引く、これが売上高線(赤色)である。
 つぎに、0.4の角度(変動費率)の線を描き、変動費線(草色)とする。
 変動費線を900,000円(固定費)上方に平行移動させる(緑線)と、これが「総原価線」となる。

[別解]
 この図から、m率0.6が、固定費を回収したところが「損益分岐点」であることが理解できると思う。
 したがって、900,000円÷(1-0.4)=1,500,000円として、求めることができる。

[設問2] 上記の資料から、目標利益360,000円を達成するための販売高を求めなさい。

[解答]
y=300x
y=120x+900,000+目標利益360,000
したがって、この二つを連立方程式として、解けばよい。
180x=1,260,000
x=7,000個
y=2,100,000円
答え…7000個販売(売上高2,100,000円)の点が目標利益達成である。

[別解]
(固定費900,000円+目標利益360,000)÷(1-0.4)=2,100,000円

損益分岐点を求める「公式」


変動費率=変動費/売上高

損益分岐点(B.E.P)=固定費÷(1−変動費率)

[問題1] 次の資料により損益分岐点における売上高を求めなさい。
   販売価格@2,000、変動費@1,200、固定費6,000,000    

[解答]
売上高をy、販売数量をxとする。
y=2,000x
y=1,200x+6,000,000
x=7,500
∴売上高=@2,000×7,500個=15,000,000

[別解]
変動費率=1,200/2,000=0.6
損益分岐点=6,000,000/(1−0.6)=15,000,000

[問題2] 問題1において営業利益を4,000,000円上げるためには何個販売しなければなりませんか。
また、その時の売上高を求めなさい。

[解答]
売上高をy、販売数量をxとする。
y=2,000x
y=1,200x+(6,000,000+4,000,000)
x=12,500
∴売上高=@2,000×12,500個=25,000,000

[別解]
変動費率=1,200/2,000=0.6
損益分岐点=(6,000,000+4,000,000)/(1−0.6)=25,000,000

第4節 直接原価計算による
「損益計算書」

 前節の例題を「損益計算書」に表すと,以下のようになります。

[設問1] 基本計画を変更して販売量を20%増に設定した場合、営業利益はいくらになりますか(販売量 10,000→12,000 個)

[解答]
  売上高
  @300×12,000個
  3,600,000
  −変動費
@120×12,000個
1,440,000
   marginal profit
2,160,000
   (限界利益・貢献利益)
  −固定費
 900,000
   営業利益
1,260,000
 したがって、販売量を基本計画の20%増加した場合、営業利益は、1,260,000÷900,000=1.4…40%の増加となります。

[設問2]
予算原案の販売量を20%増加に決定し、なお調査したところ、経済事情の変化により材料費、労務費等の変動費率が10%の増加がやむをえないという結果になった。営業利益は、いくらに修正されるか。

[解答]
  売上高
  @300×12,000個
  3,600,000
  −変動費
@132×12,000個
1,584,000
   marginal profit
2,016,000
   (限界利益・貢献利益)
  −固定費
 900,000
   営業利益
1,116,000
 したがって営業利益は¥1,260,000−¥1,116,000=¥144,000 の修正となります。

[問題1] 次の資料により、販売数量を2,000個として直接原価計算による損益計算書を作成しなさい。
  1.1個あたりの売価 700円
  2.1個あたりの変動費
      直接材料費 220円
      直接労務費 60円
      製造間接費 90円
      販売費 50円
  3.固定費
      製造費 140,000円
      販売費および一般管理費 120,000円

[解答]

損益計算書
売上高
1,400,000
(=@700×2,000個)
変動売上原価   740,000(=@(220+60+90)×2,000個)
製造マージン
660,000
変動販売費   100,000(=@50×2,000個)
marginal profit
560,000
(限界利益・貢献利益)
固定費
  製造費
140,000
  販売費及び一般管理費   120,000
営業利益
300,000

[問題2] 次の資料により、直接原価計算による損益計算書と全部原価計算による損益計算書をそれぞれ2期分作成しなさい。
1.販売価格 @6,000円
2.製造原価
    変動製造原価 @2,000円
    固定製造間接費 4,000,000円
3.販売費
    変動販売費 @200円
    固定販売費 800,000円
4.一般管理費 1,200,000円(すべて固定費)
5.生産量・販売量
   第1期
   第2期
   期首在庫量
0個
0個
当期生産量
4,000個
5,000個
当期販売量
4,000個
4,000個
期末在庫量
0個
1,000個

(注)各期首・期末には仕掛品は存在しない。

counter